薬膳の知識、普段の食事に取り入れ 咲美堂・池田哲子社長
中国の伝統医学に基づき、病気の予防や回復、健康維持のためにつくる食事「薬膳」。漢方薬店「咲美堂(しょうびどう)」社長の池田哲子(のりこ)さんは、普段の食事に取り入れてほしいと、薬膳スクール「健膳美食サロン」を2008年から運営している。自身も病気をきっかけに中国の医学と出合ったが、漢方薬を初めて服用したときは「独特のにおいや苦みに慣れるまで苦労した」という。このため飲みやすいオリジナルの漢方茶や薬膳スープのもとを開発。「誰もが健康な人生を送れるよう、薬膳の知識を伝えたい」と意気込んでいる。
◆女性の病気乗り越え
池田さんが漢方と出合ったのは、32歳で子宮内膜症を患ったことがきっかけだった。痛みなどの症状が重く、婦人科を4カ所受診したが「手術では取り切れず、再発する」と言われ、ピル(経口避妊薬)の作用で症状を和らげる薬物療法を選んだ。しかし痛みは治まらず、通勤するのも苦しい日々。
「痛みで外出できなくなって、仕事も恋もあきらめないといけないんだ…」
悲観していたときに、インターネットで漢方薬を薦める婦人科を見つけた。半信半疑で訪ねたところ、「つらかったね、もう大丈夫」という女医の一言に救われた。
ところが、処方された煎じ薬は「苦くて酸っぱくて…この世のものとは思えない味」。本当に効くのか確かめようと大手の漢方スクールに通い始めた。
そこで、症状のある部分を診る西洋医学と、身体全体を診てバランスを整える東洋医学との考え方の違いなどを知り、いつのまにか漢方を学ぶことに夢中になった。服用の効果もあって、半年たった頃には、周囲から「顔色が良くなった」「前向きになった」と言われるほど元気を取り戻した。
そんな経験をSNS(会員制交流サイト)で発信すると、同じ病気を患う女性たちから、漢方や薬膳を知りたいと相談が寄せられた。「痛みのわかる人間として、経験を伝えたい」と起業を決意。中国政府直轄組織が認定する国際薬膳調理師の資格を取得し、薬膳セミナーを開始した。さらに漢方のアドバイスもできるように、漢方の登録販売者資格を取得して「咲美堂」をオープンした。
◆資格者延べ700人
スクールには持病や健康問題に悩む30~50代の女性が多く訪れる。池田さんの講義は、「体質や体調の見極め方」と、「食材やお茶など、生活に応用できる薬膳の考え方」が中心だ。受講生の資格取得者は延べ700人以上。調理師や看護師など本業を持ちつつ、漢方や薬膳を取り入れて価値向上を目指す受講生もいるという。
最近は、従業員の健康に配慮して医療費増加や休職などのリスクを回避する「健康経営」が注目され、企業からの講演依頼も増えた。
「受講生たちの活躍の場を広げることが夢」。池田さんは大きな笑顔を咲かせた。
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【プロフィル】池田哲子
いけだ・のりこ 生命保険会社、学校法人の秘書を経てIT企業に勤めていた32歳のときに子宮内膜症を発症。漢方療法に取り組みながら漢方と薬膳を学び、国際薬膳調理師と漢方カウンセラーの資格を取得。2008年に薬膳スクール「健膳美食サロン」、13年に漢方薬店「咲美堂漢方薬房」を開業。全日本薬膳食医情報協会理事。45歳。兵庫県出身。
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【会社概要】咲美堂
▽本社=神戸市中央区北長狭通6-2-15カサベラ花隈B102
▽設立=2013年5月
▽資本金=850万円
▽従業員=8人(契約・パートを含む)
▽事業内容=漢方薬店運営、通信販売、薬膳スクール運営、薬膳イベント・資格取得セミナー開催、企業向けサービス提供など
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