東芝子会社WH破綻、巨額損失の原因 工程管理やコスト意識乏しく

 
ウェスチングハウス・エレクトリックが建設を受注した米ジョージア州のボーグル原発(共同)

 巨額損失につながった原発建設の遅れの原因は何か。今の建設現場の姿は-。東芝に巨額赤字をもたらし、経営を大きく揺るがした米原発子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)が連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請して29日で1カ月。作業員たちは「東芝は、現場で何が起きているかを把握すべきだった」と指摘した。

 作業急ぎ裏目

 男子ゴルフのマスターズ・トーナメントの開催地として知られる南部ジョージア州オーガスタから車で約45分。針葉樹の森が左右から迫る道を進むと、巨大な煙突のような形をしたコンクリートの塊が目に飛び込んできた。WHが2基の建設を請け負う同州ウェインズボロのボーグル原発だ。南部サウスカロライナ州のV・Cサマー原発の2基を含め、WHが受注した4基は1979年のスリーマイルアイランド原発事故後、新規着工がなかった米国で原子力産業再生の象徴とされた。

 WHの破綻後も建設工事を続けているが、発注した電力会社は建設を続けるかどうかを近く最終決定する見通しだ。

 「原発建設が長い間途絶えて、経験のある技術者や熟練工がいなくなったからな」。7年前から現場に立つジェイソン・レディックさんは、遅れの原因をこう話す。工程を管理する技術者は現場の作業を急がせたが、それも裏目に出た。

 「時給で働く自分たち作業員と違い、管理する人間は作業が一定の節目を迎えたら金をもらえる。だから節目に早く到達しようと急ぐ」。しかしボイラー職人や配管工にも大工仕事をさせるような無理な人員配置で現場が混乱、「相次ぐ設計変更で、材料が数カ月放置されたこともあった」と工程管理の甘さを嘆く。サウスカロライナ州ジェンキンスビルのサマー原発も状況は変わらない。匿名を条件に取材に応じた男性作業員は「経験が足りない技術者の指示は的外れだ。学位を持っているだけで、ただの読書家だ」と吐き捨てるように話した。

 仕事もないのに雇用

 別の男性はコスト意識の乏しさを指摘する。「仕事もないのに人を雇い、座っているだけで金を払ったと聞いたよ」

 両原発では、週休2日で1日10~12時間働けば月約7000~8000ドル(約78万~89万円)稼げるという。工事が遅れればWHの人件費負担は重くなるが、作業員からは魅力的な職場に映る。

 それだけに作業員が全米各地から集まり、多くの作業員はキャンプ場に止めたキャンピングカーや近くのホテルで生活する。さまざまな建設現場を渡り歩くこうした作業員は「トラベラーズ」と呼ばれる。

 サマー原発近くのキャンプ場にいた男性作業員は建設の遅れなどに対し「工事に関わった人間として申し訳ない気持ちもあるが、東芝やWHも現場で何が起きているかを把握すべきだった」とうつむいた。

 日本には国内市場の縮小で海外企業の買収に活路を求める企業は多いが、海外子会社の損失に足を引っ張られるケースも目立つ。東芝の教訓を生かせるかが、日本企業には問われている。(ウェインズボロ 共同)