キュア・アップ、アプリでニコチン依存症治療

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キュア・アップの佐竹晃太代表取締役社長兼CEO

 ■薬事承認目指す

 キュア・アップ(CureApp)は、試験中の医療用禁煙アプリ「CureApp禁煙」の記者向け説明会を実施した。新たに、アプリと組み合わせて使う「ポータブル呼気CO濃度測定器」が発表されたほか、薬事承認に向けての見通しが示された。

 ◆処方後インストール

 キュア・アップは、医師2人により設立されたベンチャー企業。代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の佐竹晃太氏は呼吸器内科医の肩書きを持つ。同社は医療分野で活用できるアプリの開発を目指し、慶應義塾大や東京大と共同研究に取り組んでいる。このうち、慶應大と取り組んでいるのがCureApp禁煙というニコチン依存症の治療用アプリだ。これは、一般的なアプリとは異なり、医師の処方により患者のスマートフォンにインストールして利用するアプリとなるという。

 2014年に薬事法が医薬品医療機器法に改正され、ソフトウエアを「医療機器プログラム」として扱うことが可能になった。これまでに、MRI(磁気共鳴画像装置)の画像をスマホから閲覧できる「Join」というアプリが認証されている。CureApp禁煙は、治療のために使うアプリとして「医療機器プログラム」への登録を目指す。

 禁煙治療は、6万円台という自己負担を払いつつも、開始1年後の継続率は30%以下という難易度の高い治療法だ。脱落者が多い理由を佐竹社長は「心理的介入が不十分だから」と説明する。数週間に1回の医師の診療時に決意を固めても、いざ禁煙を始めて禁断症状がでてくると、1人きりの家の中で欲求との戦いに負けてしまう患者が多いという。

 CureApp禁煙は、医師の診察の間に患者を支えるアプリとして開発されている。毎日の生活習慣や喫煙状況を記録し、クラウド経由で医師と共有できるほか、心理療法的アプローチをアプリに組み込み、ただ励ますだけでなく、具体的なアドバイスを提供する。

 ◆生活習慣踏まえ助言

 例えば、朝起きた時にたばこを吸う習慣がある患者の場合、「朝は洗面所で吸うなら洗面所に行かないようにしましょう」とか、禁煙2日目で禁断症状が出てきた患者には「ガムを用意してすぐ噛(か)めるようにしましょう」というようにアドバイスを送るという。また、botとのチャットを通して患者の喫煙に対する考え方を探り、間違った部分があれば動画で正しい理解を紹介するといったように、認知行動療法を用いた治療も行えるようになっている。身体的依存に効果を発揮する禁煙補助薬と、心理面をフォローするCureApp禁煙を併用することで、禁煙の継続効果をより上昇させられるという。

 同アプリは、17年4月の時点で臨床試験の最終段階に当たる介入試験の終盤に突入している。中間段階での評価は7月に慶應大から論文として発表されるが、「一般的なパッチタイプの禁煙補助薬と同等程度の成果を報告できる見込み」(同社長)としている。今後、1~2年かけて治験を行い、順調に進めば18年末頃に薬事承認を取得する(処方可能となる)という。

 さらに、治療用アプリは開発費が数億円程度と、一般的な医薬品の開発費(1000億円~)より安い点や、副作用がなく安全な点も特徴だ。患者が負担する価格について同社長は「薬や医療機器の処方時の価格は中央社会保険医療協議会が決めるため、申し上げることはできない」と前置きしつつも、「治験によって禁煙補助薬と同等の成果を出せたのであれば、従来薬の半額程度で提供できるようにしたい」と話した。

 ◆在宅でも保険適用へ

 新たに発表された「ポータブル呼気CO濃度測定器」は、呼気中の一酸化炭素(CO)濃度を測定するIoTデバイス。CO濃度測定器は、喫煙しているかを判定する指標として、禁煙治療には欠かせない医療機器だ。ポータブル呼気CO濃度測定器は、スマホとBluetoothで接続し、CureApp禁煙に呼気データを記録する。これまでの製品では、診療所などに設置するバッグ大の機器が多く、患者が持ち運べるようなタイプは国内では初としている。

 この製品が薬事承認を取得することで、在宅での禁煙治療に保険適用される見込みがある、と同社長は説明する。これまで禁煙治療で保険を適用するためには6つの要件があったが、そのうちの一つ「呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること」を、在宅診療では満たすことができず、医療費は自己負担となっていた。ポータブル型の呼気CO濃度測定器が登場することでこれを解決し、保険が適用されるようになる可能性がある。

 ポータブル呼気CO濃度測定器は、CureApp禁煙のシステムの一部として治験に臨む。薬事承認を取得後、CureApp禁煙とセットで提供する形となるという。(インプレスウオッチ)