正義のハッカーに応募殺到 政府の育成プログラムに定員の9倍
サイバー攻撃を防ぐ技術を持った人材「ホワイトハッカー」を育成する政府の取り組みが動き出す。「ナショナルサイバートレーニングセンター」が新たに始める人材育成プログラムの受講者を募集したところ、4月末の締め切りまでに、40人程度の定員に対して約9倍の応募があったことが2日、分かった。実際にあったサイバー攻撃の貴重なデータを使って技術を向上させられるほか、1年間の育成期間後、その技術をソフト開発や起業に応用できることなどが人気の背景にある。
同センターは、総務省が所管する研究機関「情報通信研究機構」(NICT、本部・東京都小金井市)内に4月1日に設置された。サイバー攻撃の脅威が増している中、国全体のサイバーセキュリティー能力の底上げが目的で、その業務の柱の一つが人材育成だ。
プログラムでは、国内に住む25歳以下を対象に4月3~28日まで募集したところ、359人の応募があった。会社員や大学生・大学院生、高専生らで、10代の応募者もいるという。目立った周知活動はしておらず、口コミなどで伝わったとみられ、同センター幹部は「予想以上の応募数だ」と驚く。選定を進めており、今月12日までに受講者を決定して通知し、月内にもスタートする。
育成期間は1年間。自身のアイデアでセキュリティー関連技術の開発を進めることで能力を高める。NICTの技術センター(石川県能美市)に自宅などからインターネットでアクセスして学ぶ「遠隔開発学習」と、全国の主要都市で6回程度、議論をしながら集中的に共同開発を行うイベントが育成の両輪となる。
イベントは週末に行われるため、学生でも空いた時間を利用して技術を身につけることができる。また、遠隔学習で活用するデータは世界的にも最大規模で、ここでしかできないトレーニングが可能だ。受講生が必要な経費は約50万円で、学生は無料という好条件も、応募者の殺到につながったようだ。
サイバーセキュリティーの分野では日本の存在感は小さく、海外技術に頼らざるを得ないのが現状だ。このため人材育成を進めることで「社会を自らの手で守っていく」(同センター幹部)という目的があり、優秀な受講生には研究者だけでなく、起業という選択肢も提供。この分野での産業競争力強化につなげることも視野に入れている。
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