首都圏でも購入可能 ファンが支える福島のソウルドリンク「酪王カフェオレ」人気の秘密

 
復興の象徴「酪王カフェオレ」などを生産、出荷している酪王(おう)乳業の本社工場。入り口でカフェオレと牛乳、牛のオブジェが迎えてくれた=福島県郡山市大槻町

 【NEWご当地グルメ】

 福島県のソウルフードならぬソウルドリンク「酪王(らくおう)カフェオレ」が、首都圏で人気急上昇中だ。福島の温泉で風呂上がりに飲んだ一杯、県内のコンビニやスーパーで買って飲んだ一杯が忘れられず、「どこで飲めるの?」と探し求める酪王カフェオレファンたち。首都圏で購入できる店舗も登場した。一度飲んだ人を虜にしてしまうその人気の秘密に迫った。

 筆者が初めて酪王カフェオレを口にしたのは、福島支局長として赴任していた3年前。東京電力福島第1原発事故の避難酪農家を支援する「復興牧場」の計画発表の場で、会見者の福島県酪農業協同組合(県酪農協)の担当者が、よく冷えた紙パックの酪王カフェオレを手渡してくれたのだ。

 思わず「開眼!」の味

 会見の行き先を聞いた支局の女性から、「酪王カフェオレ飲めるかもしれませんよ。おいしいですよ。おみやげに持ってきてくださいよ」と声をかけられたのを覚えている。

 ストローで一口飲むと、目がぱっちりと開くのがわかった。これを「開眼」というのだろうか。うまい!

 この味は何だろう。コーヒーの香りか、それともカラメルか、何か隠し味が入っているのだろうか-。そうこう考えているうちに会見が始まり、当時はまだ、取材活動も原発事故からの復興一色だったから、うまさの秘密の謎は、解き明かされないままだった。

 酪王カフェオレは、福島県郡山市大槻町にある「酪王乳業」が生産、販売している商品だ。県酪農協の出資会社で、もとは昭和50年4月に県酪農販売農業協同組合連合会(県酪連)の市乳部として発足。平成19年10月に株式会社化された。

 主力商品は酪王牛乳で、県内の大型スーパー、コンビニ、学校給食にも供給されてる。酪王カフェオレは、主力の牛乳に次ぐ経営の柱で、首都圏をはじめ、県外でのブランド力としては牛乳をしのぐ同社の「顔」。1日10トンが、郡山の本社工場から出荷されている。

 秋葉原で東京デビュー

 古くは、東京・秋葉原駅ホームのミルクスタンドでのみ飲むことができたが、現在は、首都圏のJR東日本リテールネットが運営する駅ナカコンビニのニューデイズ(NewDays)や、大学生協で販売されるまでになった。東京都中央区日本橋室町の福島県のアンテナショップ「日本橋ふくしま館 MIDETTE(ミデッテ)」でも飲める。

 さて、本題の味の秘密に迫るため、福島県の商都・郡山市にある酪王乳業の本社・工場を訪れた。正門の先で出迎えてくれたのは、酪王牛乳と酪王カフェオレの紙パックの大きなオブジェ。目にまぶしい緑の芝生の上には、乳牛の模型も置かれていてわくわくしてくる。

 取材相手は、同社営業部部長の南條光夫さん。もちろん、テーブルの上には冷えた酪王カフェオレ。南條さんに、会社の成り立ちなどについて聞いた後、ズバリ、「酪王カフェオレはなぜおいしいのか」と問いかけた。

 答えは明快だった。「原料に、新鮮な牛乳をふんだんに使っているからです」。成分表示には50%以上とあるが、「50%ちょっとではなく、搾りたての生乳をたっぷりと使うことでコクが生まれる」という。

 のど越しのしっかりとした飲み応えと、生クリームを口にしたようなコクの秘密は、県内で搾られた新鮮な生乳にあったのだ。

 メーカーによっては、生乳を生産地から工場まで長距離輸送したり、生乳をつかわない商品もあるのに対し、酪王カフェオレはその優位性を十分に生かしている。

 コラボ商品も登場

 酪王乳業の商品には、「酪王牛乳」「酪王カフェオレ」のほか、「いちごオレ」や、もっとコーヒーの味を楽しみたいという人のための深煎りコーヒーを使った「ハイ・カフェオレ」、「酪王カフェオレアイスクリーム」、ヨーグルト、プリン、果汁飲料がある。平成28年11月半ばには、カフェオレ発売40周年を記念し、カフェインレスの「酪王やさしいカフェオレ」をラインアップに加えた。

 酪王カフェオレを飲み続けてきた世代から、「妊娠時にも飲みたい」「高齢でカフェインを飲むと夜眠れなくなる」「子供にも飲ませたい」との要望を受けて、開発したまさにやさしい商品だ。

 酪王乳業のロイヤリティで、酪王カフェオレキャラメルやロングパイ、サブレやクランチといった菓子メーカーとのコラボ商品も観光客向けに登場し、人気を裏付ける。

 返礼のファンの集い

 23年3月の東京電力福島第1原発事故後、インターネットでネガティブな書き込みがされたのに対し、酪王カフェオレを応援する動きが県外から起こり、ファンサイト「福島酪王カフェオレ会」が発足した。

 その結果、カフェオレが牽引する形で牛乳の売り上げも徐々に回復し、同社は25年、苦しい時期を支えてくれたファンへの返礼の意味を込めて、「ファンの集い」をスタートさせた。今年も、日本橋ふくしま館 MIDETTE(ミデッテ)」で計画されている。多くのファンに支えられ、酪王カフェオレは需要拡大中だ。

 (地方部 大塚昌吾)