インフォステラ 複数と通信可能、料金10分の1に
■人工衛星向けアンテナシェアリング
宇宙産業ベンチャーのインフォステラ(東京都渋谷区)は、人工衛星向けアンテナシェアリング(共有)の試行サービスを近く始める。6月までに打ち上げ予定の九州工業大学超小型衛星試験センターが開発した縦、横、高さが約10センチの超小型衛星「キューブサット」5基と九工大との間での交信が安定的にできるかを調べる。
地上局が置かれる九工大には、インフォステラが開発した「ユニバーサル無線機」を設置する。この装置は、1基のパラボラアンテナで時間帯を変えながら複数の衛星と通信できる機能をもつ。衛星運用会社は、複数の地上局にユニバーサル無線機を配置することによって、クラウドベースで運用時間を管理し、衛星との切れ目のない通信を可能にする。
従来の衛星通信では使用可能な周波数帯が限られるため、衛星と地上局のパラボラアンテナは事実上セットで運用されてきた。衛星と地上局との間で通信できる時間は1日当たり30分間程度しかない。しかも、アンテナを含む地上局の設置は初期投資、運用コストともに高額で、投資回収にも長い時間が必要などの課題があった。
宇宙ベンチャーの台頭などで、打ち上げられる衛星の数が急増しており、インフォステラの倉原直美CEO(最高経営責任者)は、「大量のデータをやり取りするようになれば、常時接続へのニーズも高まる。アンテナシェアリングへの一定の需要が見込める」と予測している。
アンテナシェアリングを実用化できれば、衛星通信の利用料金が従来の約10分の1に低減できる上、複数の衛星を同時運用することによって、GPS(衛星利用測位システム)の位置精度向上などにも寄与できるとみられる。
当面、地上局を運用する企業や団体、研究機関などに、ユニバーサル無線機を無料で配布し、数年後の有料化を目指す。
同社は2016年1月に設立。資本金は3000万円。同10月にフリークアウト(東京都港区)、ベンチャーファンド(基金)を運用する500スタートアップス・ジャパン(同千代田区)などから、開発資金として、総額6000万円を調達した。
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