日本郵政、不動産事業に活路 野村不を買収でノウハウ吸収狙う 積極策に不安も
野村不動産ホールディングス(HD)の買収を検討していることが明らかになった日本郵政。市場を驚かせた巨大M&A(企業の合併・買収)構想の狙いは、人口減少と競争激化に郵便・物流事業がさらされる中、拡大している金融事業に加え、豊富な資産を生かした不動産事業にも活路を見出したいからだ。
日本郵政はTOB(株式公開買い付け)で野村不動産HD株の過半数を取得し、子会社化したい考えで、買収額は数千億円規模の見通し。野村不動産HDと、同社株の約34%を持つ証券大手、野村ホールディングスに株式の取得を打診しているもようだ。
少子高齢化で国内の郵便・物流事業は大きな伸びが見込めない。新たな収益の柱として拡大してきた金融事業も、傘下のゆうちょ銀行やかんぽ生命保険が、日銀のマイナス金利政策で運用悪化に苦しんでいる。
さらに、日本郵政は先月、平成29年3月期決算で傘下の豪物流会社トール・ホールディングスの業績不振に伴う巨額減損で民営化後初の赤字となる見通しを発表したばかり。金融に続いて経営の新たな軸になる事業の育成が急務となっていた。
日本郵政は全国に約2万4千の郵便局を抱えるほか、主要駅前の一等地にも商業施設などを持つ。買収で野村不動産HDの持つ不動産開発のノウハウを獲得できれば、資産の有効活用が期待できそうだ。
日本郵政が持つ土地や建物、機械設備などの有形固定資産については、昨年末時点での価値は3兆円超。郵便事業が鉄道輸送に支えられていたため、駅前の土地や建物を多く持つ。中でも、東京駅前や名古屋駅前の超一等地に「JPタワー」を建設し、商業施設「KITTE(キッテ)」を入居させるなど、不動産事業を強化してきた経緯がある。
野村不動産HDにとっても日本郵政と組む利点はありそうだ。三井不動産や三菱地所は自社で多くの不動産を持ち、オフィスビルからの賃料収入で経営は安定している。
一方で野村不動産HDはマンション開発が主体で、市況の影響を受けやすい。日本郵政の持つ資産は魅力的とみられる。
ただ日本郵政としては、豪物流事業での失敗により市場や日本郵政グループの大株主である日本政府などから注がれる視線は厳しさを増している。官製事業の歴史を今も引きずる日本郵政が、「まったく企業文化が異なる」(業界関係者)野村不動産HDとの融和を進められるかも難題だ。
シナジー(相乗効果)をどこまで発揮できるかは未知数で、不動産事業の育成に手間取れば、豪州での同じ轍を踏みかねず、浴びる批判も倍加するだろう。
本格的な交渉はこれからで、株式の一部取得などの部分的な資本・業務提携にとどまる可能性もある。
はからずも、日本郵政の長門正貢社長は赤字転落を発表した先日の会見で、「M&Aの機会は常にうかがっている」としながらも、「次のM&Aでは相当シビアにみる。共通のシナジーを確認しないと進められない」と慎重な姿勢を示唆したばかりだった。
今回の再編を成功させ、新機軸を打ち出して巨額減損から経営を立て直せるか。巨大グループを率いる長門社長の手腕が問われる。(SankeiBiz 柿内公輔)
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