東芝再建に2つの壁、監査法人・米WD、対立根深く
東芝が平成29年3月期連結決算を暫定値でしか発表できなかったのは、会計監査を担当するPwCあらた監査法人と対立し、適正意見を得られなかったためだ。一方、半導体事業の売却では協業する米ウエスタンデジタル(WD)から売却差し止めを申し立てられた。この対立で、財務基盤を改善する筋書きに狂いが生じる恐れもある。“2つの対立”を抱えた東芝の再建は厳しさを増している。
「監査法人と協力して最善を尽くす」
15日の記者会見で綱川智社長はこう述べ、現在のPwCあらたと協力して正式な決算を早期に発表する考えを強調した。ただ、これまでの対立による溝は根深く、信頼回復は容易ではない。
PwCあらたは、東芝の米原発子会社の経営陣が巨額損失を以前から認識していたとして、過去の決算にさかのぼって調査するよう主張。一方、東芝は同経営陣が認識していた証拠はないと詳しい調査を拒み、一時はPwCの担当会計士が監査作業から事実上離脱し、監査が一時止まっていた。
また、東芝は4月の4~12月期決算発表に先立ち、監査法人を準大手に変更して適正意見を得ることを画策した。だが、後継候補だった監査法人が、東芝の主張をうのみにするリスクを嫌気し、契約に至らなかった経緯がある。
監査法人の意見が不可欠な有価証券報告書の提出が6月末に迫り、東芝はPwCあらたの主張を受け入れ、過去の決算の追加調査にも協力するとした。綱川社長は監査法人の交代に関しても「今後のことは決めていない」と述べたが、追い込まれるまで監査法人と折り合いをつけられなかった東芝に対する、市場の目は厳しい。
一方で、WDとの対立も解決の糸口は見えない。東芝は「会話ができないから放置する以外ない」(幹部)と他社と入札手続きを強行する構えだが、国際仲裁裁判所の判断次第では、手続きが進まなくなる恐れがある。財務改善に遅れが生じれば、売却を前提に融資などで支援する銀行の対応に変化がでかねない。
決算の度重なる不手際や、来年3月末までの債務超過解消が不透明になったことで、東芝の上場廃止リスクは高まっている。関係先と対立を深める東芝は、再建に最も必要な産業界における“信頼”を失いつつある。(万福博之)
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