福井の大津屋 「食」に軸足、地域密着 独立系コンビニ、独自性で大手と共存

 
大津屋はJR福井駅に隣接する再開発ビルで運営する物販専門店にタブレット端末を配備、「海外からの訪問者と意思疎通できる」と語る小川明彦社長=4月26日、セレクトショップKirari

 コンビニ業界は、全国チェーンの大手3社への集約が進み、ドラッグストアやホームセンターなど異業種とも競合、競争は激化する一方だ。地域で親しまれてきた個性豊かなコンビニの消滅が目立つが、ユニークな試みで元気いっぱいの独立系コンビニもある。

 北関東の中堅コンビニ「セーブオン」(前橋市)は、この夏から約500店舗を順次「ローソン」に転換する。パンや乳製品を格安で販売し「コンビニなのにスーパー並みの価格」と評判だった。しかし、現金自動預払機(ATM)の設置店が少ないなど利便性に劣る面もあり「人手不足で人件費も高騰している。顧客のニーズに応えるため」(セーブオン)と、苦渋の決断を迫られた。

 経済産業省の商業動態統計によると、コンビニは全国で5万6160店舗(3月末)。都心では飽和状態となり、地方への展開が進んでおり、セブン-イレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3強で全体の9割超を占める。

 バイキング形式強み

 2022年度末に北陸新幹線が延伸するのを見込んで再開発が進むJR福井駅前。昨年4月に西口に直結して開業した高さ約90メートルの複合ビル「ハピリン」がそびえる。その1階にファミリーマートと、地元でコンビニを展開する大津屋の弁当・総菜販売店「オレボキッチン」が共存している。

 大津屋の前身は安土桃山時代から続いた造り酒屋。1976年に酒造業としては廃業、酒販業を経て、81年に「オレンジBOX おおつや」を福井市内に開店した。福井県下では初のコンビニで、地元では「オレボ」と呼ばれて親しまれてきた。

 しかし、大手コンビニとの競争が始まり、小川明彦社長は経営ビジョンを「豊かな食文化を提案し、消費者に喜んでもらう」と明確化、90年代に弁当や総菜類の販売に軸足を移す。手作り、出来たてに徹底的にこだわった結果、コンビニ店内に調理用のキッチンを完備。バイキング形式で食事ができる「ダイニングコンビニ」という独自の業態に「進化」した。

 北陸の幹線、国道8号に面した「オレボステーション米松」は、正午を過ぎると、昼休みの客であっという間に満員になる。テーブル席も含めて45席。和洋中50~60種類の総菜や弁当を1グラム1円(11時~14時、17時~20時だと1グラム1.2円)で量り売りする。ご飯かパスタ類を150グラム以上、総菜は400グラムまで詰めるのがルールで、好きなだけ盛り合わせて、レジで重さを量る仕組みだ。ソースカツやだし巻きが定番だが、季節の新鮮な食材に応じて、柔軟にメニューを変えている。

 北海道海産物も並ぶ

 店の半分は、日用品、雑貨、書籍、飲料、加工食品などをそろえたコンビニだが、さば缶詰など地元の特産品はもちろん、他店では売っていない北海道の海産物なども並ぶ。これら特産品の多くは、小川社長や社員が旅行した時に「これはいいな」と感じた商品を仕入れている。

 「大津屋も中小企業ですが、生産者側も規模が小さくて大量出荷できない。お互い小回りが利くもの同士の協業です。産地とのネットワークが広がり、大手のコンビニチェーンは模倣できないと思う」と小川社長。

 大津屋は「ダイニングコンビニ」5店舗のほか、物販専門店などを含め10店全てが直営だ。小回りができるよう適正規模を維持し顧客に徹底して寄り添っていく。例えば全店にタブレット端末を配備、翻訳ソフトを使って増え始めた海外からの来客と意思疎通するのが狙いだ。1店舗の1日平均売上高は60万円以上あり、大手コンビニチェーンの都心の店舗と肩を並べる。

 一方、ATMやチケットの予約・購入ができる情報端末は設置しない。「大手と同じ土俵で競争しても勝てない」からだ。「不特定多数の来客がある都心と違って、顔なじみの地元の人が繰り返し来店する。お金で買えない心の触れ合いを大切にしたい。マニュアルに縛られず、いつも何ができるかを考えている」。大手コンビニと共存するための挑戦に終わりはない。