(3)普通口座増で調達コスト減
Jトラスト インドネシア戦略■システム刷新、ネットバンキング開始
Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が目指すのは、リテールバンキングでナンバーワンの称号を得ることだ。そのための新たな武器、ネットバンキングが今夏にも加わる。
「顧客を取り込むにはネット・モバイルバンキングの充実が必要。『スマートフォンからアクセスしたい』という声に『夏から大丈夫』といえる。個人預金を増やせる」
◆スマホで可能、武器に
ジャカルタから飛行機で1時間20分、伝統的なジャワ美術の中心地でインドネシアの古都ジョグジャカルタ。唯一の営業拠点、ジョグジャカルタ支店のフェビラ・アジア・リニ支店長はサービス開始に胸を躍らせる。
他行より提供が遅れていた個人向けネットバンキングを実現できるのは、基幹システム(コアバンキング)を8月にも入れ替えるためだ。
BJIの田中庸介取締役IT担当は「『われわれもできる』といえるので個人預金の獲得ツールになる。早くていいものを提供すれば顧客は集まる」と強調。その上で「時代や顧客のニーズに合わせて機能を追加しやすくなる基盤を整えた。システム刷新で飛躍の時期を迎える」と話した。
新たなコアバンキングが稼働すると、ネットバンキングのほか利用代金を預金口座から即時に引き落とせるデビットカードの発行、ATM(現金自動預払機)の機能追加と他行とのネットワーク化なども可能となる。
「他行より使いやすい」ネットバンキングとの評価が高まれば、個人に口座開設を働きかけやすくなる。財務と資金調達の責任者、リオ・ラナシア取締役は「われわれの目的は調達コスト(平均預金金利)の引き下げ。そのために普通預金口座を増やす」と明快だ。
「6.5%キャンペーン実施中」。同支店に止めてあった社有車の後部ガラスにこんなステッカーが貼られていた。通常の普通預金金利が3~4%に対し当初3カ月間は6.5%という高金利で口座開設を誘う。
◆高金利キャンペーン
こうした小口・低金利の預金を集めるリテールマーケティング活動の一環として全店舗一斉に毎月1回、「GO CAR」運動を展開している。人が集まるショッピングモールやイベント会場などに行員が出向いて高金利をアピールしている。
大口・高金利(約8%)の定期預金から小口・低金利の普通預金への流れをつくることで2016年には調達コストが7.7%と前年比で2.2ポイント超削減した。ネットバンキングが始まる17年はさらに引き下げて6.6%を目指す。
ジャカルタ郊外にあるクラパガディン支店のアナ・フランシスカ支店長は「調達コストを下げるため定期より普通預金を集める。顧客は50歳以上がほとんどだが、キャンペーン金利を生かして30~50歳を増やす。そのためのマーケティング担当者がほしい」と語った。
◆顧客開拓の鈍さ指摘
一方で、キャンペーン活動を通じて課題も見えてきた。各店舗を回ってリテールの重要性を説いたリオ氏は「営業担当者は付き合いの長い既存顧客の預金獲得に躍起だが、リテールマーケティングになじみがなく新たな顧客開拓に自信を持っていない」と指摘する。Jトラスト常務の浅野樹美氏は「(定期から普通預金へと)入れ替えの最中なのに現場の動きは鈍い」と厳しい。
BJIは、流動性預金に占める当座・普通預金の割合を示すCASAを現状の12%から20%に引き上げる計画を持つ。高いほど調達コストは下がるが、達成には金利だけでなく利便性もリテールマーケットでアピールする必要があり、ネットバンキングの開始はその材料になりうる。求められるサービスを機動的に開発できるコアバンキングの活用が、調達コスト引き下げの鍵を握る。(松岡健夫)
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【用語解説】「GO CAR」運動
GO CASA Retailの略で、小口・低金利の普通預金・当座預金集めを強化する取り組み。期間を設けずに全店舗一斉に毎月1回実施している。
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