(5)3~5年で東南アジア制覇

Jトラスト インドネシア戦略
旧体制から脱却を図るため2016年12月に就任したBJI役員。中央が安藤律男頭取

 ■藤澤信義社長 リテールを主戦場に

 2014年11月に買収したインドネシア地場銀行(現Jトラスト銀行インドネシア=BJI)の再生にめどをつけたJトラストの藤澤信義社長に今後の事業展開などを聞いた

 ◆初の黒字化

 --BJIの再生に向けた評価は

 「最初の1年間は、当初の派遣メンバーが思った成果を上げられなかった。そこでアジアで実績を持つ日本人(安藤律男BJI頭取)をトップに起用。ポートフォリオの入れ替えや不良債権の抑制などに取り組み、リテールファイナンスで勝負していく態勢を整えていった。そのかいもあって17年1~3月期に四半期ベースで初めて黒字化。まだ万全ではないが、不良債権が発生しなければ月次ベースで黒字を計上できるようになってきた」

 --リテール戦略は

 「日本の銀行はインドネシアに進出しても日系企業と華僑を相手にするだけで、リテールに出ていかない。われわれはこうした日系銀行のビジネスモデルとは違い、リテールを主戦場とする。Jトラストグループの成長の源泉となってきた消費者金融事業は韓国でも成功した。その経験を生かす。この一環として、マスマーケティング活動による『攻め』の営業を開始、17年は広告費として5億円を投じる。18年も広告費を増やしていく。個人顧客の取り込みによる資金調達コストの引き下げが狙いだが、認知度が向上し好業績につながればいい」

 ◆POSに店舗機能

 --リテール戦略に不可欠な店舗網は

 「17年は地方主要都市に支店を新設する一方で、拠点整備が難しい地域にはPOS(簡易営業拠点)をネットワーク化し店舗機能を持たせる。基幹システム(コアバンキング)が稼働すれば、モバイルバンキングも使えるようになり代理店網として活用できる。われわれのインドネシアにおけるポテンシャルは相当高いといえる」

 --拠点展開ではPOSが重要になってくる

 「クボタの農機具の割賦販売事業を展開しているが、23拠点(今年3月時点)で月間130台程度の申し込みがあり好調だ。また消費者ローンに近いマイクロファイナンスの需要もある。インドネシアではマイクロファイナンスを必要とする貧困層は2億人を超える。2月にスラウェシ島で試験的に開始したが住民は好意的だ。われわれは決済機能と与信ノウハウを持つので、この需要を取り込める。個人顧客を増やしていくツールとしてPOSを活用する」

 --注力してきたコンプライアンス(法令順守)は

 「インドネシアには日本の企業文化は当てはまらないし、宗教や考え方なども違う。このため日本式コンプライアンスをそのまま持っていっても難しい。とはいえ、われわれにとって最重要課題であることに変わりない」

 --今後の展開は

 「インドネシアなど東南アジアは人口が増加し不動産価格も上昇していく。普通に事業を展開していけば、その成長を間違いなく取り込める。このため東南アジアで金融のネットワークを拡充し、リテールファイナンスでナンバーワンを目指す。今まさにM&A(企業の合併・買収)に動いており、増資の引き受けなどの話があれば、その機会を逃さず取りに行く。そのためにも、まずはインドネシアでもうかるビジネスモデルを構築する必要がある。3~5年で東南アジア制覇に向けた勝負がつくはずだ」(松岡健夫)=おわり