米WD、東芝半導体に2兆円買収提案 独禁法に抵触の懸念も

 
東芝本社が入る浜松町ビルディング=港区芝浦(斎藤浩一撮影)

 経営再建中の東芝が売却手続きを進めている半導体子会社「東芝メモリ」(東京)をめぐり、三重県四日市市の工場に共同投資する米ウエスタン・デジタル(WD)が総額2兆円の買収提案をしていることが24日、分かった。独占禁止法に抵触する恐れがあると東芝側は懸念しており、綱川智社長は同日のWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)とのトップ会談で修正を求めたとみられる。

 東芝は、三井住友銀行やみずほ銀行といった主要取引行を対象にした会合を25日に開く。東芝メモリ売却の状況を詳細に説明し、支援の継続を求めるとみられる。

 関係者によると、提案は、WDが普通株に転換できる優先株で1兆5000億円を拠出し、産業革新機構と日本政策投資銀行に普通株で計5000億円を出してもらう内容。特別目的会社(SPC)を受け皿として東芝メモリを買収し、数年後をめどにWDが普通株を引き取る計画という。機構と政投銀にも協力を打診する。

 記憶媒体の半導体「フラッシュメモリー」の世界シェアは、東芝メモリが2位で、WDが3位。買収で寡占化が進むことから、中国などで独占禁止法に基づく審査は難航する可能性がある。審査が長引き売却が遅れれば、東芝は負債が資産を上回る債務超過を解消できず、上場廃止となる恐れがある。

 今月10日にも綱川氏とミリガン氏は会談したが、物別れに終わった。その後、WDは国際商業会議所(本部パリ)の国際仲裁裁判所に東芝メモリの売却中止の仲裁を申し立てた。

 一方、WDはこれまで、東芝が東芝メモリ株を担保に銀行から新たな融資を受ける計画に反対だったが、東芝と対立を続ければ事業に悪影響が広がると判断し、容認する方針に転換したもようだ。

 東芝メモリの売却では、技術流出を警戒する政府の主導で、機構や政投銀が出資する案が浮上している。WDはこうした政府関係者とも協議をするとみられる。