大林組 5Gを建機遠隔操作に活用

テクノNavi
大林組が実施した建設機械の遠隔操作による施工。実証実験では、遠隔制御室でモニター画面を見ながら操作する

 ■KDDI、NECと実証実験

 大林組は今冬、KDDI、NECとともに第5世代(5G)移動通信方式を活用した建設機械の遠隔操作に関する実証実験を始める。5Gは総務省が2020年の商用化に向けて旗振り役を務めており、同通信方式を活用した遠隔操作は、防災復旧工事などの危険性が高い現場での活躍が期待されている。大林組は今後、高精細映像の送信や、瞬時に機械を動かすなど、遠隔操作技術向上を目指す。

 無線機器による遠隔操作をめぐっては、操作者が建設機械から最大2キロ程度しか離れられないほか、操作信号が建設機械に届くまでの時間が遅れた場合、操縦しづらさを感じるなどの課題があった。

 実証実験では、5Gの特長でもある高速、大容量、低遅延通信を検証。大林組が昨秋に開発した建設機械を無人運転する汎用(はんよう)遠隔操縦装置「サロゲート」を採用したほか、NECが5G無線機などを提供する。

 今回は、5Gでの利用が検討されている28ギガヘルツ帯対応のアンテナシステムを使う。一般的に、電波は周波数が高くなるほど遠くに届きにくくなる。このため、電波を届ける幅を絞り、電力を集中することで届く範囲を延伸する技術「ビームフォーミング」を活用する。

 また、建設機械に取り付けられた6台の高精細4Kカメラで捉えた映像が、無線基地局を経由して遠隔制御室に設置されたモニター画面に映し出される。

 操作者は、実際に現場にいなくても鮮明な4K画面を見て状況を把握できる。操作をしてから機械が動き出すまでの時間がリアルタイムになり、操作性が向上する。

 大林組の担当者は「遠隔操作技術が向上すれば、将来の建設機械自動運転化の一つのステップとなる」と話している。

 5Gは、すべてのモノがインターネットにつながるIoT時代に不可欠な基盤技術として期待されており、総務省は20年の5Gの実現を目指す。大林組などの取り組みは、同省が今年度から産官学で実施する総合的な実証実験に選ばれた。