トヨタがモータースポーツを強化する理由 極限で培う“次の基盤”
■「根幹」として経営資源投入
トヨタ自動車がモータースポーツブランド「GAZOO Racing(ガズー・レーシング、GR)」の活動を広げている。世界耐久選手権(WEC)など従来の活動に加え、公道を走る最高峰の一つ世界ラリー選手権(WRC)に約18年ぶりに再参戦。4月には担当部門を社内カンパニーに昇格させ、クルマづくりや人材育成につなげる態勢を充実している。
クルマ鍛え人育てる
昨年6月、パリから約200キロ南西の都市ル・マン。伝統の「ル・マン24時間レース」のゴールまで残り3分で、トップを快走するGRの5号車が急減速し、停止した。初優勝目前のまさかのトラブルでの失格に「信じられない光景だった」(トヨタの豊田章男社長)。
失意の中、優勝した独ポルシェが数時間後に開いた祝勝会で、招かれたGRチームは拍手喝采で迎えられた。北沢重久・GR統括部長は「伝統あるレースで初めてライバルと認められた。大きな意味のある戦いだった」と振り返る。
トヨタは世界販売で首位を争う一方、環境対応車など「優等生」とも言えるクルマが目立ち、卓越した速さや耐久性を競うモータースポーツの世界で存在感は薄かった。
だが、そのイメージが大きく変化している。豊田社長の掛け声の下、2007年から独ニュルブルクリンク24時間耐久レースにGRの名称で参戦。約300メートルの高低差がある25キロの過酷なコースは「クルマを鍛え、レースの厳しい環境が人を育てる」(豊田社長)。
12年にはWECに参戦し、今年復帰した公道競技のWRCでは2戦目で初優勝の快挙を果たした。北沢氏は「(参戦は)耐久が一つの観点。極限状態で、速く安全に走り続ける知見が量販車を含めて次のクルマにつながる」と指摘する。
景気に関わらず活動
実際、トヨタは昨年1月、ニュルブルクリンクで培った技術を生かし、スポーツ車「86」のエンジンの応答性や車体剛性を上げた特別仕様車を限定100台で発売。昨年8月に一部改良した86にも反映した。
ただ、モータースポーツ活動は、費用が年数百億円に上る競技もあるなど膨大だ。トヨタもリーマン・ショックなどの影響で、09年まで8年間参戦した最高峰レース「F1」から撤退した苦い経験を持つ。
そのため今年4月に「ガズー・レーシングカンパニー」を社内に設立した。北沢氏は「モータースポーツで、改良したクルマから得た収益で活動するサイクルをつくりたい。景気に関わらず、クルマづくりの基盤となる活動として続ける」と話した。
トヨタは今後も経営の「根幹」の一つに位置付けるモータースポーツ活動に経営資源を振り向ける方針だ。(会田聡)
■トヨタが参戦する主な世界的モータースポーツ
◆開催
・参戦車両
・最近の戦績
◆ニュルブルクリンク24時間耐久レース ドイツで年1戦
・「LEXUS RC」
・17年総合25位
◆世界耐久選手権(WEC)「ル・マン24時間」を含む年9戦
・レース専用車「TS050 ハイブリッド」
・17年第1戦 英シルバーストーン優勝
◆世界ラリー選手権(WRC)欧州を中心に年13戦
・「ヤリス(日本名ヴィッツ)WRC」
・17年第2戦 スウェーデン優勝
◇
【用語解説】GAZOO Racing
GA(画)のZOO(動物園)という意味を持つ中古車情報などのウェブサイト「GAZOO.com」が由来。2007年にニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦時にチーム名として初めて使用した。15年4月にはトヨタ自動車のモータースポーツ活動を「TOYOTA Racing」「LEXUS Racing」と統合し、名称を一本化した。
関連記事