「東芝メモリ」売却大詰め、5陣営に一長一短
東芝の半導体子会社「東芝メモリ」の売却手続きが大詰めを迎えている。協業相手で他社への売却を認めない米ウエスタン・デジタル(WD)を含め5陣営が買い手候補に名乗りを上げ、必死のアピールを展開している。ただ、提示内容にはそれぞれ一長一短があり、いまだに候補を絞りきれない状況が続く。
東芝が5陣営の中で本命視してきたのは、官民ファンドの産業革新機構や日本政策投資銀行、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などから成る日米連合だ。日本側が経営の主導権を握れるうえ、海外への技術流出を懸念する経済産業省の意向にも沿うためだ。
ただ、革新機構が出資する上で必須条件となる日本の事業会社集めは難航。タイムリミットに間に合わない可能性がある。提示額も1.8兆円と、東芝側が求める2兆円を下回る。
これに対し、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は提案額が2兆数千億円と最も大きい。だが、中国を生産基地と位置付ける同社による買収には技術流出の懸念があり、政府が「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づき買収を認めない可能性がある。昨年シャープを買収した際、決定後に買収額を大幅に引き下げさせた経緯などから、「信頼できない」(東芝幹部)との声も根強い。
政府の懸念払拭のため、シャープにも出資させて日本企業が参加する形を取り、さらに米アップルや米アマゾン・ドット・コムなどの「ビッグネーム」が味方についたことを訴えるが、劣勢は否めない。
一方、ここにきて有力視され始めているのが米投資ファンドのシルバーレイクと組む米半導体大手のブロードコムだ。2.2兆円程度を提示したとみられる同社は、買収後の設備投資や雇用維持にも一定の保証を与えているもようで、東芝幹部も「一番案がしっかり作られている」と評価する。同じ半導体メーカーでも、東芝メモリと事業が重ならず、独占禁止法の審査が短期間で済むほか、安全保障上の技術流出の懸念もない。
ただ、同社はM&A(企業の合併・買収)を繰り返すことで急成長してきただけに、度重なる買収に伴う「のれん代」の償却負担や、買収後の転売を危惧する声も聞かれる。
このほか、韓国同業のSKハイニックスも、米投資ファンドのベインキャピタルと組み、独禁法が障害とならないよう自社の出資比率を抑える案を提示。オリックスにも資金協力を仰ぐなどの動きをみせる。WDの出方を含め、混沌(こんとん)とした状況はぎりぎりまで続きそうだ。(井田通人)
◇
■東芝メモリの売却先候補
WD(米国)
長所
・四日市工場を共同運営
・設備投資を継続
短所
・独禁法審査が長期化
・東芝と対立で不信感
KKR(米国)
長所
・政府が主導し、産業革新機構などと連合
短所
・日米連合による条件提示に遅れ
・高配当を要求
ブロードコム(米国)
長所
・2兆円超を提示
短所
・WDが反発
・買収後の転売に懸念
SKハイニックス(韓国)
長所
・次世代メモリで共同開発
短所
・独禁法審査が長期化
鴻海精密工業(台湾)
長所
・2兆数千億円提示
・連合にビッグネーム参加
短所
・政府が技術流出懸念
・シャープ買収時に買収合意額を引き下げ
関連記事