外部委託で事業リスク抑制、がん医薬品開発

株式ニューカマー

 □ソレイジア・ファーマ 荒井好裕社長

 悪性腫瘍に特化した抗がん剤や副作用による患者の負担を和らげる薬などの開発を手がける創薬ベンチャー、ソレイジア・ファーマは、開発品の商品化が視野に入った。

 「治療が難しいがん患者のためにも新薬を送り出したい」(荒井好裕社長)と企業の認知度と信頼性を高め、事業を成長させるため、東証マザーズ市場に3月24日、上場した。荒井社長に今後の見通しなどを聞いた。

 --商品化が近いのは

 「化学療法による副作用で、吐き気を催したり嘔吐(おうと)したりするが、皮膚に張るだけでこれらを抑制する世界で唯一の貼り薬と、化学療法・放射線療法でできた口内炎をカバーする薄い膜を形成し痛みを緩和する医療機器の2種類はすでに開発を終え、販売に必要な承認申請を完了した。血液がんの一種である末梢(まっしょう)性T細胞リンパ腫の抗がん剤は、開発の最終段階にある」

 --医薬品の開発はコストがかさむが、経営面で工夫していることは

 「医薬品は基礎研究から、臨床試験、発売まで長い時間がかかるため資金も莫大(ばくだい)になる。しかし、当社は事業リスクを小さくするため、製薬会社や研究機関から一定程度、研究が進んだ新薬候補物質の開発・販売権を取得して臨床試験を行い製品化する。これにより成功確率を高めている。研究所や工場は持たず、製造はアウトソーシングしている。販売については中国では、北京、上海、広州の3都市で拠点を整備して自社販売をするが、それ以外の地域とアジア諸国、国内についてはパートナー企業に委託する」

 --なぜ、自社販売と委託販売を組み合わせるのか

 「中国の3都市は市場が大きいため、自社販売によって高収益を確保する。しかし、全て自社販売では体制の構築など、固定費が膨れあがるリスクが高くなる。固定費率をコントロールするには、委託販売を組み合わせる必要があった」

 --業績は

 「2017年12月期の売上高予想は4億2300万円で、営業損失は17億8700万円の見通しだ。開発費用がかさみ赤字が続いているが、来年度には2種類の製品を販売できると期待している。製品が流通すれば黒字化していくと想定し、19年12月期には黒字に転換できるとみている」

 --事業の見通しは

 「現在、審査中の製品の承認を年内には取得したい。来年から販売を開始し、少しでも早期の黒字化を目指していく。それに加えて新製品の開発も手掛ける。具体的には決めていないが、希少ながんの治療薬を検討している。開発費用と期間によっては、黒字化の時期が遅れることがあるかもしれない。しかし、日本では高齢化が進んでいることもあり、2人に1人ががんにかかる。このため新薬開発は不可欠だ。事業を黒字化するとともに、新製品への投資も続けていきたい」

【プロフィル】荒井好裕

 あらい・よしひろ 東京薬科大院修了。1985年サール薬品(現ファイザー)入社。アムジェンを経て、2007年ジャパンブリッジ(現ソレイジア・ファーマ)入社、13年2月から現職。56歳。東京都出身。

【会社概要】ソレイジア・ファーマ

 ▽本社=東京都港区海岸1-2-20 汐留ビルディング3階

 ▽設立=2007年1月

 ▽資本金=59億6100万円

 ▽従業員=18人

 ▽売上高=4億2300万円(17年12月期予想)

 ▽事業内容=がん領域に特化した医薬品・医療機器の開発販売