サザコーヒー 原料に自信、こだわりの「うまいもの」開発

茨城発 輝く
香りとコクが楽しめる夏にぴったりの無糖コーヒー

 ドアを開けて建物内に入ると、コーヒーや菓子、雑貨などの商品がセンス良く陳列されている。奥には落ち着いた雰囲気の喫茶スペースがあり、その一角に飾られた海外の多様な仮面が異国情緒を醸している。

 国営ひたち海浜公園で知られる茨城県ひたちなか市に本店を構える「サザコーヒー」。1989年に建てられ、JR常磐線勝田駅から徒歩約10分の距離にある。コーヒーの製造、販売を手掛け、県内外14カ所でコーヒーショップを展開している。

 映画館から喫茶店へ

 サザコーヒーの前身は映画館だ。鈴木富治氏が42年に「勝田宝塚劇場」を運営したのが始まり。やがて息子の誉志男氏が経営を引き継ぐが、テレビの普及に伴う業績の低迷を懸念し、飲食業への転換を図る。69年、同駅近くに喫茶店「且座(さざ)」を開いた。店名は「座ってお茶を飲もう」という意味の禅語にちなんだ。

 サザコーヒーが取り扱うコーヒー豆は、コロンビアの自社農園で栽培するほかにも、厳選した各地の農園から直接買い付けている。安定して「おいしいコーヒー」を提供するには、特定の生産者から豆を手に入れればいいとの発想からだ。以前は問屋から一定の品質の豆を仕入れるのが難しかったという。良質な豆が入荷したときに、まとめ買いする同業者の手法からヒントを得た。

 こだわりは「自分たちが欲しいと思うかどうか」。生産者や栽培方法を把握するため産地に足しげく通い、2008年からは加工品の仕入れも見直し、取引先にも出向いている。

 「どこで作られ、何が入っているか。自分で選び、分かっているものしか取り扱わない」

 副社長の鈴木太郎氏(47)はこう断言する。

 太郎氏は、父の誉志男氏に促されて向かった海外でコーヒーの「目利き」としての基盤を築いた。コーヒーを数多く飲み、品評会の審査員を務め、優勝した農園を見て回る。「自分なりに『うまいもの』の答えを持っている。原料供給に関しては、日本一のクオリティーといっても問題がないくらいだ」というほどの自信を持つ。

 独自の商品開発にも積極的だ。過去には、江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜が飲んだとされるコーヒーを再現した「徳川将軍珈琲(コーヒー)」を生み出した。昨年は茨城大学と組み、明治時代の思想家、岡倉天心が滞在した米ボストンで当時流行していた浅煎りのコーヒーを再現した「五浦(いづら)コヒー」を開発した。

 県産の果物を使ったシェイクの販売、最高級のパナマ産コーヒー豆「ゲイシャ」の仕入れにも力を注ぐ。太郎氏は「パナマ・ゲイシャを自分よりも集められる人は日本にいないと思っている」と胸を張る。

 安全・安心に配慮

 子供が生まれたのを機に、太郎氏は食の安心、安全により一層、目を向けるようになった。食と健康にまつわる情報を発信する「アグリサイエンスカフェ」と称するイベントの開催も、その一環だ。誰でも参加できるイベントで、今月3日には専門家らを招いて乳製品や脳梗塞の講話を聞く機会を設けた。

 「例えばショートケーキのクリームに入っている油脂や乳化剤も、肉を長持ちさせるための塩も添加物。情報を共有し、選択する力を養ってもらえたら」と話す。

 結果が出るまで続けてしまう性格という。それだけに、結果に満足できるまで、その情熱が冷めることはない。(海老原由紀)

【会社概要】サザコーヒー

 ▽本社=茨城県ひたちなか市共栄町8-18 ((電)029・274・1151)

 ▽設立=1942年10月

 ▽資本金=2560万円

 ▽従業員=約190人

 ▽売上高=10億円(2016年3月期)

 ▽事業内容=コーヒーの製造販売、喫茶業

 □鈴木太郎副社長

 ■「ここにしかないもの」を常に

 --東京農業大学に入ったいきさつは

 「植物や生物が好きで農学部に行くことにした。そのときはコーヒーとつながっていなかった。父と仕事をしたくなかったから農業をやろうと。ブルーベリー農家をやりたかった」

 --海外で語学に励んだ

 「大学3年の夏にいきなり父から『グアテマラに行け』といわれて、スペイン語の学校に通わされた。英語が通じず、ジェスチャーをしながら言葉を身に付けた。育種に関わる研究者とも友達になった」

 --その後、心境が変化した

 「2000年には父から『コロンビアに行け』といわれ、コーヒーの品質を調べる部署に半年いた。腹をくくって、この仕事しかないなと思った。東日本大震災(2011年3月)後くらいから経営に関わるようになった」

 --父親から学んだことは

 「コーヒーの選び方。『原料にはエネルギーをかけろ』といわれてきた」

 --喫茶のメニューに地元産の果物を使ったシェイクがある

 「地元の良いものを使ってみたかった。イチゴシェイクは村田農園(茨城県鉾田市)のイチゴを使う。ブルーベリーもある。新商品は鉾田市の農家のメロンを使った」

 --心掛けていることは

 「楽しく仕事ができるようにすること、基本的にはコミュニケーション。社員も率先して海外に出し、品評会の審査員や農園の収穫をさせている。人のつながり、教育には金と時間をかけている」

 --今後の課題は

 「気候変動などでコーヒー豆が手に入らなくなる時代が来る。それに向けて原料を供給できるようにしたい」

 --今後の展望は

 「小売業と手を組み、例えばスーパーでブランド商品を売りたい。『ここにしかないもの』を常に開発していきたい」

【プロフィル】鈴木太郎

 すずき・たろう 23歳のときに関西のコーヒー問屋で2年ほど修業し、その後、東京農大農学部に入学。卒業した1999年、サザコーヒーに入社。日本スペシャルティコーヒー協会の理事を務める。47歳。茨城県出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■ネルドリップで深煎りの本格派

 布製のフィルターを使う抽出方法「ネルドリップ」を用い、深煎りしたブレンド豆に92度の湯を注いで丁寧に抽出した「ドリップアイスコーヒー」。原料は主にグアテマラ、ブラジル両国産を使用。サザコーヒー本店と同様の技術で作り、コーヒーの香りとコクが楽しめるという「本格派のアイスコーヒー」だ。

 冷やすのはもちろん、温めてもおいしい。お勧めの飲み方は、牛乳と1対1の割合にして作る「カフェオレ」という。

 無糖。1リットル540円。夏の贈り物として6本セットも用意している。

 ケニア、グアテマラ、コロンビアの3カ国で栽培した豆をブレンドし、水で抽出した新商品の「ゴールデンブリューコーヒー」(720ミリリットル、1350円)もある。こちらは爽やかな味わい。