□シークエンス取締役、LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史
■韓国IRの成否は外国人客の動向次第
韓国では江原道にある江原ランドカジノ以外は外国人専用カジノであるため、その収益は訪韓観光客の数に比例している。
文化体育観光部によれば、2016年の訪韓外国人観光客は1720万人で、中国人が804万人、日本人が229万人と、この両国で全体の60%を超えている。ただ、これら観光客の多くがソウルに集中し、ソウル以外の外国人専用カジノは、(地理的な囲い込み戦略を打ち出しやすい仁川空港や済州島を除いて)厳しい状況にあるといわざるを得ない。地理的環境により優勝劣敗が進む韓国カジノの状況下で、エリアの囲い込みと、とりわけ中国人と日本人観光客の誘致という意味でのIR事業というのは、今年50周年を迎える韓国のカジノの歴史が生み出した必然的な帰結ともいえる。
ちなみにカジノの入場者数を見ると、(数値は文化体育観光部の資料から引用)ソウル市内の「パラダイスウォーカーヒルカジノ」の2014年の年間入場者数は約80万人で、そのうち約65万人が中国人観光客。同施設の事例は極端であるとしても、韓国国内16カ所の外国人専用カジノの入場者のおよそ60%が中国人で、20%が日本人と、韓国のカジノ事業がいかに両国の観光客の動きに左右されるかが見て取れる。
このように、韓国IR事業の成否の行方は中国人と日本人観光客の動向にかかっているが、文化体育観光部が先日発表した数字では、2017年4月の中国人観光客は何と月間22万7800人にとどまった。また前年同月比では約67%減で、3月も同約40%減と、その減少幅は拡大している。単純に比較はできないがこのままのペースで推移すれば年間の中国人観光客が300万人に届かないことも予想され、そうなると2016年の800万人から500万人以上のマーケットが消失することになる。
さて、日本版IRはどこの国の人々でにぎわうことになるのか。幅広いターゲットを視野に入れた展開が、「成否の鍵の1つ」を握ることはいうまでもない。
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【プロフィル】木村和史
きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大学経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のリポート執筆などを手掛ける。
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