技術の蓄積を再認識し未来考えるべき
シリーズ エネルギーを考える□ノンフィクション作家・河添恵子さん
東日本大震災から6年。いまだに日本のエネルギー・環境政策は混沌の中にある。国の安全保障や国民生活の安定に直結する明日のエネルギーが定まらなければ、私たちの未来への不安も払拭されない。日本の将来のエネルギーはどうあるべきか。各界の識者、専門家に聞く。
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■外資への不安募る列島
--東シナ海の尖閣諸島周辺海域での領海侵入や南シナ海での岩礁埋め立てによる軍事関連施設建設など、中国は日本近海域で力による支配行動を強めています。中国問題の専門家として、その狙いをどう見ていますか
「日本の領土である尖閣諸島周辺海域では、中国公船(海警)による領海侵入などの挑発行為が連日のように続いており、空でも航空自衛隊がかつてないほどのスクランブル発進(緊急発進)を行う事態になっています。東シナ海も南シナ海もそうですが、中国の狙いはエネルギーや漁業などの資源の確保と覇権です。ただ今の中国が、天然ガスなどの海底資源をきちんと取り出す技術力を持っているかは疑問で、今やっていることは自分たちの利権にしたいがための“陣地取り”でしょう」
--河添さんは7年以上前から、北海道の土地の中国系資本による買い占めについて問題提起を始められました。日本列島の土地も狙われているということですか
「中国は急速な勢いで砂漠化が進み、水質の問題を含め深刻です。10年近く前に聞いたのですが、水資源が豊かな北海道から中国に船で水を運べないかという話が持ち上がっていたそうです。ニセコ周辺の広大な山林、水源地が廉価で手に入るとかで、中国系資本をはじめ外資の格好のターゲットとなっていたのです。2008年は北京五輪もありバブルのピークでしたが、取材を始めたところ、リゾート開発や富裕層の別荘開発などの名目で、水源地や水源地近くの土地が次々と買収されていることが分かり、危機感を抱きました。今やその規模は、山手線内側全体の11倍以上の約7万ヘクタールに達していると推定されているようですが、外資とは一見すると分からない方法による買収も進んでいますから、実際はもっと多いはずです」
--北海道には中国からの投資を歓迎する声もあるといわれます。どうして問題なのですか
「北海道経済が長期低迷する中、『内地は助けてくれない。スキーヤーも激減してしまった。アジアからの観光客が期待できる今、中国マネーによる投資でも良い』という道民の声があるのは事実です。では、私がなぜ中国マネーに警鐘を鳴らしてきたのかと言いますと、世界中のチャイナタウンがそうですが、一度、中国マネーで買収された土地は、半永久的に戻ってこないからです。乱開発が進むでしょうし、税金を徴収できない、不法労働者も多く潜む“ブラックホール”のような地域になっているケースも目立ちます。北海道にも同様の危機が忍び寄っており、『北海道は10年後、中国の32番目の省になる』などの声も内外から聞こえてきます。現地を重ねて取材しながら、私は、中国系移民が多く居住するカナダの西海岸みたいになるのかな、と漠然とイメージしていました。この数年の間に、北海道など一部自治体は、土地売買契約の事前届け出を義務づける水資源保全条例を整備しましたが、安全保障と絡めた政府規制が必要だと思います」
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■希薄な安全保障意識
--北海道以外でも、中国系資本の土地買収はあるのでしょうか
「全国あちこちが買収されています。富士山周辺や九州各地の水源地や元リゾート開発地など。沖縄も、東北地方もです。中国系資本が広大な土地を買収する際の業界についても注目すべきです。11年3月に東日本大震災が起きるまでは、主にリゾート開発企業だったのですが、震災以降は太陽光発電企業に変わりました。最近は、農業と太陽光発電を共存させるソーラーシェアリング事業も行われていますが、太陽光パネルを敷き詰めた農地で機械農業は継続できるのでしょうか。そもそも再生可能エネルギー分野は、中国系でなくてもベンチャー企業が大半を占めています。中国系の太陽光パネルメーカーは、『25年保証』などとうたっていても、それより企業の寿命の方が短い可能性は高そうです」
--日本の土地買収の狙いは何ですか
「中国ビジネスは、土地の取得から始まることを多くの人が理解していないようです。チャイナタウンにするもくろみ以外には、エネルギー覇権があるはずです。メガソーラー(大規模太陽光発電所)を設置し、水源地と水利権まで確保すれば、電気、水道といったライフラインを握ることになります。私は再エネはリスク分散のためにも普及拡大すべきとの考えですが、中国に住んだ経験のある人間として、政府や役人のさじ加減で電気を止めたりできる国の企業にライフラインを握られるのは耐えられません。日本人が愛してやまない『安心、安全』は果たして担保されるのでしょうか」
--エネルギーや水資源は、国の安全保障に直結します
「電気やガス、上下水道といった生活インフラが、日本ほど優れている国、安定している国はほかに見たことがありません。私は仕事で世界40カ国以上に行きましたが、日本は断トツです。電気は平時に停電することはほぼありえないですし、水道に至ってはそのまま飲める国など世界に数えるほどでしょう。何よりこの状態を可能にし、支えてきたのは、日本の高い技術力と現場の努力、そして強い責任感です。高度成長期の公害問題を克服し、きれいな空気と水を取り戻すことにも成功してきました。私たちは美しい自然と豊かな生活を当たり前のように享受していますが、その裏にある先進国家としての日本の優れた技術、それを堅持し発展させてきた企業と日本人のまじめさを忘れてはいけません。エネルギー分野では震災以降、原子力発電をやめるべきとの声も強まっていますが、日本がもし原発を完全にやめれば、国内の優秀な原子力技術者の海外流出は避けられません。世界には、高度な日本の技術を欲しがっている国や企業はたくさんあります。これまでの技術の歴史や蓄積、人的資産を含めた財産を無にしてしまうような政策を日本が取ることには、断固として反対します」
--技術流出もそうですが、問われるのは日本人の安全保障意識ですね
「やはり『平和ボケ』なのでしょうか。多くの日本人には、日本が外国から攻撃される、侵略されるといった危機意識がないように思います。ある意味、平和は空気と同じでタダというか、そういう思い込みが蔓延しているようです。一方、世界の多くの国と人びとは、『今も戦中であり戦前』との意識を持っています。だから、軍備もエネルギーも強化しなければ国は守れないと考えていますし、産業スパイの取締りを含め、技術流出にも厳しい目を向けています。世界の常識を日本人だけが忘れてしまったような気がします」
--最後に、日本のエネルギー政策はどうあるべきとお考えですか
「エネルギーの自給自足がもちろん理想ですので、そこに近づいていくことが重要かと思います。そのためにも、再エネ、原子力、火力、水力などをバランスよく利用していくべきだと思います。原発のすべてが悪という意見には、少なくとも同調できません。エネルギー供給に問題が起きれば、真っ先に影響を受けるのは国民生活です。私たちは日本の生活インフラの水準の高さを再認識し、それを長い歳月をかけて築いてきた信頼できる日本企業に、これからもエネルギー供給を担ってもらうべきだと思います」(聞き手 神卓己)
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【プロフィル】河添恵子
かわそえ・けいこ 1963年千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学(現名古屋市立大学)卒業後、86年北京外国語学院、87年遼寧師範大学(大連)に留学。帰国後94年から作家活動をスタート。2010年に上梓した『中国人の世界乗っ取り計画』(産経新聞出版)は、ネット書店Amazonの2部門で半年以上1位を記録するベストセラーに。他に、『だから中国は日本の農地を買いにやって来る』(同)など著書多数。月刊『正論』や夕刊フジなどでも執筆。一般社団法人新しい歴史教科書をつくる会理事・「女子部」共同代表。コメンテーターとしてテレビ出演も多数。
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