ホンダアクセス“KIDS部”が活動2年目
キッズデザイン新時代■自動車を素材に子供の興味理解
ホンダグループの自動車用アクセサリーメーカーであるホンダアクセス(埼玉県新座市)が、子供と自動車をテーマにした研究に力を入れている。子供を持つ有志の社員8人で構成する“KIDS部”が本格始動して1年。ホンダ製ミニバンの用途やアクセサリー開発のヒントを探したり、ファミリーイベントを開いたりして活動の方向性を探ってきた。しかし、子供の目線は親とは大きく違うことに気付いたという。
◆親の都合から離れて
自動車会社で子供をテーマにできることを考えると、車内を汚すのを防ぐアクセサリーとか、親が装着や調整がしやすいチャイルドシートの開発といったところに陥りやすいという。
もちろん、それらは重要ではあるが、KIDS部のメンバーは、親の都合だけに活動の幅を狭める必要はないと考えた。
「2年目となる今年は、親の目線ではなく、子供の目線にも焦点を当て、どんな取り組みがあり得るかを徹底的に洗い出すことにした」と語るのは商品企画部で先行リサーチや企画を担当する石川香織さん。KIDS部のメンバーだ。
KIDS部はいわゆる“部活動”の位置づけとはいえ正式なビジネスユニットでもある。さまざまな部署に属する人材が横断的に参加し、ユニークな発想も生まれやすい。
そんなKIDS部は今年1月、特定非営利活動法人(NPO法人)の東京学芸大学こども未来研究所と共同研究を開始。1年をかけて、子供の発想を学ぶことにした。
「子供の発想は想像とは違うことも多い。イベントに自動車を提供し、好きなように触ってもらったところ、運転席に座るといった行動がある半面、本来は荷物を置いておくラゲッジスペースを熱心に見入る子供がいたりもする。そういう子供の興味をまずは理解したい。われわれに何ができるかはその理解の上で見えてくるのではと考えている」(石川さん)
KIDS部のメンバーは「最終的には自動車や自動車のある生活の楽しさを子供たちに伝えたい」という。そのために、メンバーの自動車に関する固定概念を一度壊してみる作業も続けている。
例えば、マンガやSF映画の中の自動車はどういうものかを把握。自動車に関する過去のテレビCMなどを分析し、自動車に求められるものがどう変わってきたかを理解する。子供と自動車の関係も、こうした取り組みの一環でもあるのだ。
◆“足”以外の一面知る
自動車には“生活の足”という重要な役割がある。しかし、自動車にはそれ以外の価値もある。従前から運転を楽しむニーズはあった。運転自体、あるいは車窓を眺めることがレジャーであり、同乗者がいればコミュニケーションツールであるかもしれない。そんな気づかれていない“自動車の一面”を知ることに大きな意味がある。
折しも、日本では若者の自動車離れが深刻だ。将来のユーザーでもある子供を知ることは、自動車を正確にPRすることにも有効だろう。
では同社はこの先、見いだしたものをどう活用するのか。
「現時点ではあまり制限を設けず研究する。それらの知見を基に、イベントやコンテンツの創出などができるかもしれない。最終的には、そんな取り組みがモノやコトに落とし込めればいい。その暁にはキッズデザイン賞にも挑戦したい」(同)
キッズデザイン協議会にも参画するホンダグループ。その一翼を担うホンダアクセスKIDS部の2年目は、一層の“深化”を目掛けて加速している。(キッズデザイン取材班、おわり)
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