風土改革、優良部門売却、副社長の眼帯姿にも 株主から質問相次ぐ
東芝株主総会詳報(2)午前10時51分、東芝側から議案のほか、決算見通しや半導体子会社の売却手続きの状況などの説明が終わり、株主の質疑応答が始まった。冒頭から大荒れだった3月の臨時株主総会とは打って変わって、しばらくは淡々としたやり取りが続いた。
株主「東芝グループ内でパワハラや退職勧告、人権侵害などがある。風土改革は行われているのか」
牛尾文昭専務「グループ会社の個別の労務事案であり、従業員のプライバシーに関連する回答はいたしかねる」
株主「東電の福島第1原発事故に関連して、国および東電に対する損害賠償請求の可能性は」
畠澤守常務「損害賠償については、私どもの立場を代弁するような形で質問をいただき感謝している。明確なルールあるので、その中でより品質の高い製品を供給することに注力したい」
株主「なぜこの会場(幕張メッセ)を設定したのか。以前のように都内の(アクセスの)いいところでやってもらいたい」
綱川智社長「多数の株主の来場が予想される中で、適切な収容能力がある会場ということで幕張になった」
株主「異常事態の東芝に必要なのは強力なリーダーシップだが、どのような取り組みをしているか」
牛尾専務「マネジメント・経営層には、リーダーシップの資質を多面的、客観的に強化するサーベイを実施している。風土変化は途上だが、風通しの良い風土が実施されるよう努めている」
<ここで質問はいったん社外取締役にも飛んだ>
株主「社長以下の方々に経営を任せておけない。これまでに出来事に対して、社外取がどう義務を果たそうとしているか」
前田新造社外取締役「新体制になって1年9カ月間、経営課題に取り組んできた。社外取6人すべては株主の代表として経営に意見して尽力している。監督とともに、中長期のビジョンに資するものであれば、むしろ背中を押すことも私たちの仕事の一部と考えている。取締役会という限られた中だけでなく、社外取が集まって議論する取締役評議会などを通じ、本音の議論も行っている。少しずつ変化を遂げながらガバナンスも変わってきている。これからも努力したい」
株主「東芝が必死になってやっている中で、社外取が株を持たないで取締役になるということは倫理的、道義的に反するのでは。株式を持たない方の説明をお願いしたい」
前田社外取「就任以来、毎日のように新しいインサイダー情報が入ってくるので、株式購入するのは不可能だろうと思っている。株式を持つ、持たないで経営判断が左右されることも避けなければならないと思う」
櫻井直哉上席常務「社外取の方にも一定数の株式を保有してもらうのは、株主視点で経営みてもらうことにもなるが、本人の意向なので要請はしていない」
<懸案である半導体子会社の売却についても、株主からの懸念の声が相次いだ>
株主「社長の説明だと米ウエスタンデジタル(WD)が邪魔をしているようにとれるが、大丈夫かというのが正直なところだ」
成毛康雄副社長「外に出てくる情報は、非常に敵対的な情報ばかりだが、四日市工場での日常のオペレーションは友好にやっている。一方で売却には反対、され、メモリー会社の経営に参加したいと提案いただいているが、内容が独禁法審査に長引きそうな内容だったり、金額があまりよくなかったり、入札に正式参加してなくて、なかなかかみ合わない状況だ。一緒に合弁会社を運営しているパートナーなので、歩み寄るところは歩み寄り、係争ごとはきちんとやるということで、早い解決を目指して頑張っていきたい」
株主「なぜ優良部門である半導体事業を売却するのか。債務超過を解消して上場廃止免れる理由だと思うが、一方で優良部門抱えたまま再上場して企業価値高める選択肢もあった」
綱川社長「半導体メモリー事業にはかなりの開発費用がかかり、設備投資費用も数千億規模でかかる。財務状況が弱い中で投資がわれわれにはできない点から、売却して財務基盤回復し、社会インフラなどの事業で、社会に貢献するのが大筋の方針なので理解いただきたい」
<ここで眼帯姿で登壇している成毛副社長に質問が。会場に笑いが起こる>
株主「役員の登壇みたら成毛副社長が眼帯されているが、理由は。暴漢に襲われたのか。会場に金属探知機があったのに関係は」
成毛副社長「事の顛末(てんまつ)は、日曜日に外で掃除めいたことをやっていて、その時にこけて目の上をぶつけた。傷は大したことはないが、見てくれ悪いので(眼帯をしている)。ちゃんと仕事はできている」
櫻井上席常務「金属探知機の設置で、株主の皆さんに不便をかけて申し訳ありません。多数の株主がお越しになられる中で、もしものことがあってはいけない。安全に全面的に配慮するということで配備した」
株主「決算報告できない理由は監査法人の同意が得られないとの報道だが、御社の見解は。監査法人変更の検討は」
佐藤良二社外取締役「監査法人からは米原発子会社の損失を昨年10月以前に認識していたのではないかと指摘され、さらに詳細な調査必要ということで、原発子会社を監査している。監査法人の変更は決定したことはない」
■詳報(3)半導体売却 韓国メーカー参画報道に株主「技術流出心配ないか」の声 に続く
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