半導体売却 韓国メーカー参画報道に株主「技術流出心配ないか」の声
東芝株主総会詳報(3)総会開始から2時間以上が経過したが、株主の質問は尽きない。半導体子会社の売却に関する質問が目立つ一方で、企業風土のあり方について問いただす内容も相変わらず多い。半導体売却では、韓国のSKハイニックスが参画することで、技術流出を懸念する意見も出た。
株主「企業風土の話がたびたび出ている。それを統括する方が、自慢気げに刷新に時間がかかるとおっしゃった。360度サーベイの話もあった。今頃そんな話をしているのか。360度サーベイは普通の会社が行うものだ。東芝が今さら(それに取り組み)刷新に時間がかかるという話をするのは非常に違和感がある(会場から拍手)。15年ぐらい前に務めていた会社が今の東芝と同じような状況なったが、そこに座っている(役員の)方々が変われば企業風土は一気に変わる。風土ではなくカルチャーの話をしてほしい。それと東証2部に変更になるが、どんな問題が発生して、株価はどう動くと予測しているのか」
綱川智社長「ご心配、ご迷惑をおかけして大変申し訳ない。どこの会社にもあるが、当社にも内部通報制度というのがある。これが昨年度、2倍以上に利用数が増えた。上司にモノを言っても本人に被害がないという制度で、その利用数が増えたことが、草の根のように職場の雰囲気を変えていっていると信じている」
橋本紀晃上席常務「内部管理体制プロジェクトを担当している。株主のみなさまにご心配をおかけして大変申し訳ない。先日、東証と名古屋証券取引所から2部に指定替えになるとの連絡を受けた。特設注意銘柄であることに変更はなく、審査は継続的に行われている。審査に真摯(しんし)に対応し、内部管理の改善、指定解除をしっかり行っていく。一刻も早く改善したと認められるよう、社員一同がんばっていきたい。株価については(半導体子会社の)外部資本導入、決算と有価証券報告書(有報)の発表、米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の再建計画認定など、大きな課題をしっかりやっていくことで、株価はきっと上昇すると思うし、それを目指して役員一同がんばっていく」
株主「東証2部降格の理由は何か。いきなり降格のニュースが出た感じだが、降格は会社の成長の阻害要因になる。名誉毀損(きそん)で訴えたいぐらいだ」
橋本上席常務「東証の規則で、株主資本がマイナスの会社は1部ではなく、2部になるとの規定がある。通常は、有報が提出された段階で判断するが、弊社の場合は提出が遅れていて、今の予定では8月10日に設定されている。公表済みの業績見通しで、(今年3月末の)株主資本がマイナスになること(債務超過)が確定していたので、降格の判断となった。来年3月までにプラスにならないと上場廃止になるので、半導体子会社の売却などで解消する。特注銘柄の審査に対し、しっかりした結果を出したい」
株主「半導体子会社の売却について。IBD連合(日米韓連合)には韓国メーカー(SKハイニックス)も入っていると報道されているが、先ほどの説明では触れられなかった。その理由と技術流出の心配はないのかを説明してほしい」
成毛康雄副社長「米投資ファンドのベインキャピタルが設立する特別目的会社(SPC)に融資する形でSKは参加しているが、議決権は持たない」
株主「WHを買わなければ粉飾決算(不正会計)もなかったし、家電事業の売却もなかった。原発という大変な事業は東芝1社でやるべきでない。輸出から撤退し、社会インフラ中心の会社になることをもっと徹底しないといけない。優秀な技術者を、社会のために活用するという姿勢が大事だ。すでに米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスはその方向へ舵を切っている。(創業から)140年で培った力をもう一回発揮してほしい(会場から拍手)」
畠澤守常務「WHの米原発建設で巨額損失を出し、ご迷惑をおかけしたことをおわびする。当社の経営方針として海外原発事業のリスクを完全に遮断するという明確な方針が出ている。海外の原発建設からは撤退する。一方で原発事業全体については、エネルギー資源がないわが国において、原発は一定の重要性を担っているので、社会的責任を果たしていく。また、タービンや発電機については競争力を持っている部分もあるので、単品の供給はチャンスがあれば続けていく。コーポレート、取締役の判断を受けながら、リスクがしっかり遮断されていることを確認しながら進めていく」
秋葉慎一郎副社長「新生東芝は社会インフラ中心で行くべきとのご意見、大変ありがたい。当社の社会インフラ事業は3つの戦略の下で進めようとしている。まず公共関連。水処理、防災、通信といった分野で比較的シェアが高い製品があり、老朽化したインフラの更新、高度化需要が見込める。機器を納めるだけでなく、保守や点検も含め、顧客のオペレーションの中に入って課題を解決する。地域的には成長ポテンシャルが大きい中国やインド、領域では競争優位性のある昇降機や鉄道、2次電池などへ効果的な投資をすることで、持続的な成長をはかりたい」
株主「今回の取締役選任は、一括で承認するのではなく、どうか個別に審議し、この人はやって、この人は続けてほしいと決めてほしい」
綱川社長「今回の取締役候補は、いずれも指名委員会が取締役にふさわしいとして指名した。その点を何卒ご理解いただきたい」
株主「東芝もいよいよ三流以下の会社になりつつある。危機感を持っていただきたい。役員の方々は口では危機感を持っていると言うだろうが、けっしてそうはみえない。まず会場にきて思ったのは、役員が多すぎる点だ。きょう発言していない役員は基本的にいらないと思う。そう考えないと従業員、株主、世間は納得しない。そういう見える改革をしてほしい。役員の数を4分の1以下にしてほしい」
牛尾文昭専務「執行役員は社長、副社長を中心とする執行役人事委員会が選任し、取締役が決めている。適正に人選を行っているので、どうかご理解いただきたい」
株主「前回の臨時総会、昨年の総会でも質問させていただいた。企業風土を改善させていく一番わかりやすい教育の仕方は、上にモノを言って解雇された人間を戻すことではないか。これにより、従業員1人1人が言っても大丈夫と確信できる状況を作っていく。それが上層部の教育より、はるかに効果があると思う。もう1つは原発について。温暖化対策などに有利と言うが、やはりそうではない。(脱原発は)世界の流れなので、再稼働には加担しない方針を出してほしい」
牛尾専務「解雇の撤回については、当社のグループに対して団体交渉の申し入れがあった件だと思うが、プライバシーに絡む情報開示はできず、回答は差し控えたい」
畠澤常務「わが国に資源が少ない中で、原発が一定の役割を担うことは否定できない。電力会社が再稼働に取り組む中で、当社も技術などを最大限に生かして貢献していきたい」
株主「半導体売却については米ウエスタンデジタル(WD)と何とかうまく話していただきたい。質問だが、東芝がこうなったのは原発事業で巨額損失を出したことにある。それなのに原発事業を統括していた志賀さん(志賀重範前会長)から一度も説明がないのはなぜか(会場から拍手)」
綱川社長「半導体については(日米韓連合の)コンソーシアムメンバーと最後の交渉をしているので、東芝の出資を残せないかを含め、いろいろ検討している。WHの損失については、志賀も含め会社を代表して私からおわび申し上げる。志賀に関しては、2月14日に取締役と会長を辞任し、今回の総会を機に執行役員を退任する。何とかご理解いただきたい(会場からヤジが聞こえる)」
株主「都議選の1票の方がここより価値がある。でもなぜ株を持っているのかというと、東芝が好きだからだ。だからあえていいたいが、(今のままでは)風土改革は何年たってもできない。2002年に東芝ケミカルが京セラに売られて1年で変わった。それは役員が全然違うからだ。経費の使用も少ない。東芝の社長は新幹線はグリーン車か、公用車は減らしたか、飛行機は使っているのか」
綱川社長「当社製品をご愛顧いただきありがたい。風土改革は今の取締役会メンバーは1年9カ月やってきたが、社風の変革をいろいろ進めている。上司にモノをいえない体質が問題だったが、今は指名、報酬委員会も社外取締役のみで構成されている。社長の権限を利用した暴発も抑えられる。社長は最高財務責任者(CFO)の人事も決められない。私の場合、飛行機は中国などの近場ではエコノミー、遠い場合はビジネスクラスを使っている。公用車もセキュリティーの問題はあるが、全体としては減らしている。経費の効率化の観点から考えている」
■詳報(4完)WHの責任、技術者の流出、国からの口出し “信頼回復”に向け質疑応答 に続く
■詳報(2)風土改革、優良部門売却、副社長の眼帯姿にも 株主から質問相次ぐ に戻る
■詳報(1)WDに「不当に売却を妨害」と非難 怒号なく静かなスタート に戻る
関連記事