WHの責任、技術者の流出、国からの口出し “信頼回復”に向け質疑応答

東芝株主総会詳報(4完)
東芝株主総会始まる。会場に入る株主=28日午前、千葉・美浜区の幕張メッセ(酒巻俊介撮影)

 東芝の株主総会も開始から2時間半が経ち、いよいよ終盤。3月の臨時株主総会では株主からの怒号がやまなかったが、今回はこの段階になっても、そこまで荒れている様子はない。株主からは東芝を擁護する意見も出た。

 株主「新聞やテレビに東芝は袋だたきにされ、言われたい放題だ。初めて株主総会に出席したが、株主の質問には失礼なものもあり、役員を批判的に言うと会場に拍手が湧くのが、不思議でならない。ここは真剣な場であり、議案を真摯(しんし)に受け止めて認めたい。応援のために今日来た。素人ですが、頑張ってほしい」

 綱川社長「ありがとうございます。上場企業として信用力を持って、事業をしっかりやっていくことで(期待に)お応えしていきたい」

 株主「東芝のOBだが、契約社員として入社し、就業規則や安全規則の説明がなかったが、企業コンプライアンスの現状は」

 綱川社長「このような経営状況になっていて改めておわび申し上げる。経営トップとして責任だ。問題解決に向けて全力で取り組む所存。ご意見を参考にさせていただきながら、真摯に対応していきたい」

 <ここで経営危機の元凶となった米原発会社に移った>

 株主「米ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営トップへの刑事責任や損害賠償責任の追及について、東芝はどのような対応をするか」

 櫻井上席常務「WHで工事損失引当金に関する大きな損失が発生した原因は、米原発建設会社の買収だ。この意思決定過程で、どういうようなことが行われていたか、原因究明を行った。経営判断としてどうだったかという点はあるが、個人的な不正、背任にあたる事象は特に見いだしてはいない。本件については米国で当局の調査も行われており、調査の進展をみて、最終的な判断をするべきだと考えている」

 株主「東芝は原発で海外事業をやめるということだが、やはり全面的に原発をやめるべきではないか。再生エネルギーを主体にしたエネルギー利用に特化すべきだ」

 畠澤常務「エネルギーというものをわが国、世界で考えたときに、私1人の考えで決められるものではない。ベストミックスでもちろん再生エネを使う。国、電力会社、国民全員が考えて答えを探すのが大事だ。その中で当社も貢献できるところは精いっぱいやりたい」

 株主「今回の経営危機はWHによる米原発建設会社の買収に端を発しているが、経営判断に間違いはなかったか」

 畠澤常務「買収に至った経緯は複雑で、もともと電力会社などと結んでいる建設工事契約で、工事の遅れの際に、WHがかなりの額で損失を被る計画になっていたのが背景にある。一緒に工事を行っていた建設会社のパフォーマンス上がらない中で、買収することで工事管理をWHが自らできるなど総合的判断だった。限られた時間と情報の中でその判断をせざるを得なかったのは反省材料だ。いかに正確に情報を把握することが適切判断の前提なので、大きな反省材料だと思う」

 株主「有能な技術者の流出をいかに防止するか」

 西田直人専務「技術者流出は確かに例年に比べると多い。いろんな策を講じている。1つは働きやすくするためのテレワーク。また、自分たちがやりたいことをやっているというのが大事だ。個人個人に面談して意見をできるだけくみ上げるような取り組みをしている。東芝がどう立ち直るのか、再生の姿が大事だと思う」

 <ここで綱川社長から、開始からすでにかなりの時間がたったので、質問はあと2問と提案。すんなりと受け入れられた>

 株主「東芝メモリの売却について、ベインキャピタルの背後にあるSKハイニックスに、技術流出あり得ないとの話があったが、技術を得られないのに東芝に投資するのはSKの株主への背任行為なのであり得ないのではないか。また、WHは連結から外れたが、今後は東芝が負う保証債務の金額全体は」

 成毛副社長「SKハイニックスとは、現時点ではメモリの共同開発など友好関係維持している。過去の技術漏洩(ろうえい)問題も適切な判断いただいて終わっている。今回のベインとSKの関係だが、交渉中なので詳細説明は控えるが、関係は基本的には融資という形を取る」

 平田専務「WHは連結から除外されたということで、焦点は東芝が電力会社2社に対する親会社保証だ。サザン電力と交渉終わって、スキャナ電力と交渉中だ。現時点で最大限合理的な引き当てを持って、今日説明したバランスシートの中に組みこんでいる。7000億強の親会社保証をバランスシートに負債として織り込んでいる」

 株主「最近、官邸のご意向という言葉がはやっているが、国からの口出しはないか」

 綱川社長「個別の問題でもあり、回答は控えさせてもらう」

 この後、綱川社長が間髪おかず、「それでは決議に移らせていただく」と語り、取締役9人の再任など議案の賛否を問う。会場から再び拍手。原案通り3分の2以上の賛成で可決された。

 綱川社長は「一昨年と同じく株主総会で決算報告できない、信頼を損なう事態が生じていることを改めて深くおわびする。株主の皆さまからの意見を真摯に受け止め信頼回復に向けて全役員の総力を挙げる」と話し、締めくくった。

 総会は午後1時9分に終了。3時間9分は過去4番目の長丁場だった。出席した株主は984人で、平成15年以降で最も少なかった。一方、質問者は過去最多の29人に及んだ。

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