東芝とWDが訴訟合戦に 売却手続きに暗雲

 
株主を待つ東芝株主総会の受付=28日午前、千葉・美浜区の幕張メッセ(酒巻俊介撮影)

 東芝が東芝メモリの売却をめぐり、WDと訴訟合戦に突入したことで、今後の売却手続きに不透明感が強まってきた。優先交渉先である官民ファンドの産業革新機構を中心とする日米韓連合の買収提案は、東芝とWDの対立解消を前提としているからだ。「寄り合い所帯」である同連合の利害がまとまらない恐れもある。

 「もうカードを切るしかなかったのか」。日米韓連合の関係者はため息を漏らした。

 東芝は21日に日米韓連合を優先交渉先とすることを決めたが、調整に手間取り綱川智社長が公約とした28日までの契約には間に合わなかった。東芝自ら新たな火種をまいたことで、月内の契約も見通しにくくなった。だが、期限が迫ってもWDとの交渉にらちがあかず、対決姿勢を明確にせざるを得なかったことに同連合関係者の同情もにじむ。

 WDと東芝の協議はこれまでことごとく不発に終わった。7月14日には、WDが売却中止を求めて起こした訴訟の審問が米国で行われる。早ければ同月中にも売却差し止めの仮処分裁定が下る可能性がある。

 東芝は、WDの横やりで東芝メモリの売却交渉の遅延を余儀なくされたとの思いが強く、今回の対抗措置でWDに揺さぶりをかける狙いとみられる。

 だが、そんな東芝のやり方に問題はないのか。「係争がないことが投資の前提条件だ」。日米韓連合には両社が対立を解消しない限り、出資すべきでないとの声もある。

 連合の中核をなす革新機構は公的資金を使うとあって、係争中の先行き不透明な案件には関わりたくないはずだ。そんな思いとは裏腹に東芝とWDの対立が深刻化したことで、身動きが取りにくくなる懸念もある。

 日米韓連合は革新機構のほか、日本政策投資銀行、米投資ファンドのベインキャピタル、韓国半導体大手SKハイニックスなどの寄り合い所帯でもある。東芝メモリと同業のSKは出資ではなく融資で参加し、独占禁止法に抵触するリスクを抑える考えだが、その狙いや東芝メモリの経営への参画意欲は不透明だ。東芝の半導体技術やノウハウを入手したいのが本音との見方もあり、東芝内部には過去に研究データを不正に持ち出す事件を起こしたSKへの警戒感もある。

 売却手続きの着地点はいまだ波乱含みだ。(万福博之)