iPhone発売10年、日本市場を侵食 「ガラケー」の雄だったNECら追い込み
米アップルがスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」を発売して29日で10年を迎えた。画面を指で触って操作する革新性や音楽プレーヤーなど多彩な機能で市場を席巻し、豊富なアプリも備え人々の暮らしを一変させた。世界のスマホ市場では韓国サムスン電子や中国メーカーが攻勢をかけており、顧客争奪戦は激しさを増している。日本企業も大きな影響を受けた。
電話を再発明
「きょう、アップルは電話を再発明する」。2007年1月、最高経営責任者(CEO)だった故スティーブ・ジョブズ氏はサンフランシスコでの発表会で「全てを変えてしまう革命的な新製品」としてアイフォーンを紹介した。
当時有力な製品にあったキーボードをなくし、画面をタッチして操作する方式を採用。シンプルなデザイン、音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の機能を取り込んだことも人気に火を付け、半年後の6月29日に米国で発売された際は店に長蛇の列ができた。
08年にアプリ市場を開設。今ではゲームや趣味から仕事まで200万種類を超え、外部の開発者も巻き込んだ「経済圏」(ティム・クックCEO)を形成した。
アイフォーンが牽引(けんいん)したスマホ市場めがけて、米グーグルの基本ソフト(OS)を使った勢力が相次いで参入した。米調査会社ガートナーによると、スマホ市場の世界販売シェアは、09年にフィンランドのノキアがトップ、カナダのブラックベリーが2位だった。11年にはアップルが首位に躍り出るが、その後、サムスンがトップの座を奪った。
日本ではアイフォーンは08年7月に発売され、現在50~60%のシェアを持つとされる。「ガラケー」時代の雄だったNECやパナソニックはスマホから撤退に追い込まれた。ソニーや富士通も劣勢が続く。
アイフォーンは、日本メーカーが強みを持っていた車載機器や精密機器の市場も侵食した。カーナビのパイオニアやJVCケンウッドが構造改革を強いられ、ニコンやキヤノンといったカメラ大手もコンパクト型の事業を大幅に縮小した。
販売は頭打ち
世界中の人たちのライフスタイルを変えたアイフォーンだが、近年は販売に頭打ち感が出ている。アップルは製品数が多くないだけに、主力製品の販売が落ち込めば経営への打撃も大きい。
発売10年の節目を迎え、画面に次世代パネル「有機EL」、本体に強化ガラスを採用したモデルを9月に発表するとの観測が広がる。クックCEOは「お楽しみはこれからだ」とアイフォーンの進化に意欲を示すが、人々の想像を超える製品を再び生み出せるかが成功の鍵を握る。(ニューヨーク、東京 共同)
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