□ぱちんこジャーナリスト、LOGOSインテリジェンスパートナー・POKKA吉田
■「射幸性抑制が依存症対策になる」の論拠は
警察庁が規則改正詳細案を業界6団体に伝達したのが6月19日。それ以降、各団体の幹部はほぼ連日協議を繰り返している。今回の改正内容が射幸性の劇的な規制強化になっているからだ。
私は射幸性規制強化推進論者なのだが、今回の警察庁の対応には疑問も持っている。警察庁はギャンブル等依存症対策のための規則改正と明言しているが、いったいどこのどいつが「射幸性抑制が依存症対策になる」と言っているのか。射幸性が抑制されれば勝ち負け金額が減る。これは「財布を気にせずに遊技できる」ことも意味する。むしろ、依存問題を抱える人を増やす、間口を広げる、ということになりはしないか強く危惧する。
昨年、政府が閣議決定したから遊技客の換金行為はホール営業者が風営法を順守している限り賭博の罪には当たらない、となった。刑法の賭博の罪は「一時の娯楽」の場合は適用されない。このことから、警察庁は本来、風営法体系が一時の娯楽の範疇(はんちゅう)に留まるように気を付けることが重要で、だから今回「こういう規制強化によって一時の娯楽であることがより鮮明になる」ということを、せめて水面下ではちゃんと言ってほしかった。
一時の娯楽として賭博の罪との線引きの明確化、なら理解できる。しかし依存対策として射幸性を抑制する、というのが奇妙に映るのだ。
仮に機能するというのであれば、公営競技も日本版カジノもそういう規制となるべきであるが、カジノにおいて射幸性規制なんてのは制度設計的にナンセンスではないだろうか。依存対策の成功例として挙げられるシンガポールで「4時間5万円」なんて規制があるはずもない。そんなものはもはやカジノではない。
私は射幸性抑制には大賛成だ。しかし依存対策は自力で回復することができない層を見つけ出してケアすることや予防啓発が重要だと思っている。「射幸性抑制は風営法の保護法益のために強化するもの」という認識に警察庁が戻ってくれることを願っている。
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【プロフィル】POKKA吉田
ぽっか・よしだ 本名は岡崎徹。1971年生まれ。神戸大学経済学部中退。著書に『パチンコが本当になくなる日』(扶桑社新書)など。2016年2月から本名の岡崎徹としてぱちんこ業界紙「シークエンス」発行人編集長。
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