いま貨物が熱い!! 佐川急便、トヨタは専用列車 コンテナずらり編成美

 
安治川口に到着するスーパーレールカーゴ。夜の東海道を駆け抜けてきた

 長距離トラックの運転手不足を背景に、注目を浴びている貨物列車。一般的には地味な印象を持たれがちで、決して乗車することはできないが、ファンの間で人気の存在がある。佐川急便やトヨタ自動車など、運送会社やメーカーが走らせる専用列車がそれだ。

 時速90キロ超の俊足

 かつては寝台特急が往来していた夜の東海道・山陽線。ブルートレインがなくなった現在では貨物列車の独壇場となっている。その中で最高時速130キロというJR貨物ナンバーワンのスピードを誇るのが佐川急便専用列車の「スーパーレールカーゴ」だ。

 下りは東京貨物ターミナル(東京都品川区)を23時14分に発車し、大阪の安治川口(大阪市此花区)に5時26分に到着する。走行距離は約560キロ、平均時速は90キロを超える韋駄天ぶりを発揮。「SAGAWA」のロゴ入りで統一されたコンテナを載せて走る姿は、スターの風格が漂う。

 運行開始は平成16(2004)年。トラックからのCO2排出量を減らそうという考えが背景だった。速さの秘密は世界初の「貨物電車」であることだ。一般の貨物列車は貨車を機関車が牽引するが、スーパーレールカーゴのM250系は編成のうち、前後2両ずつの計4両がモーター付き車両で、中間の12両が付随車。1編成にコンテナ28個が載せられ、積載量は往復で大型トラック56台分に相当する。

 真夜中の佐川vs福通

 専用列車は福山通運も走らせている。25年から東京-大阪間、27年から東京-福山間、そして今年5月からは名古屋-福岡間での運行を開始した。愛称名は「福山レールエクスプレス」。こちらは電気機関車が牽引。緑色に統一されたコンテナがずらりと並ぶ編成美が「撮り鉄」のハートをつかんでいる。

 東京発の大阪行きは東京貨物ターミナルを22時47分に発車し、吹田貨物ターミナル(大阪府吹田市)には5時34分に到着する。最高速度が110キロのため、東京貨物ターミナルを27分後に出発した佐川のスーパーレールカーゴに途中で抜かされてしまう。ダイヤが決まっているため、福山レールエクスプレスはどれだけ頑張っても逃げ切ることはない。ただ、こちらは1編成にコンテナ40個が載せられ、積載量は往復で大型トラック80台分。輸送量では福山レールエクスプレスに軍配が上がる。

 日本最大の自動車メーカーのトヨタ自動車も専用列車を持っている。その名は「トヨタロングパスエクスプレス」。愛知周辺でつくられた自動車部品を岩手工場に運ぶため、平成18年に2往復で誕生した。その後、1往復になったが、この春に復活。新型コンパクトSUV「C-HR」の生産に合わせたものだ。

 好調のJR貨物

 アサヒビールとキリンビールは今年1月から、吹田貨物ターミナルから金沢貨物ターミナル(金沢市)まで貨物列車を使ったビール系飲料の共同輸送を始めた。西濃運輸は長距離トラック定期便の多くを鉄道輸送に切り替えることを決めた。貨物列車に追い風が吹いている。

 JR貨物が発表した29年3月期決算。赤字が続いていた鉄道事業が5億円の黒字となった。事業別の数字を開示し始めた19年3月期以降で初の快挙だ。慢性的なドライバー不足や地球温暖化対策で、トラックによる輸送を、鉄道や船舶に移す「モーダルシフト」は進むとみられる。貨物列車の存在感はますます高まっていくに違いない。