ゲームからライフスタイルへ範囲を広げるVR 積極的に挑めとソニー・デジタル社長
本格的な普及期を迎えたように見えるVR(仮想現実)。利用するためのハードウェアが何種類も登場し、コンテンツの方もエンターテインメントやプロモーション、サービスといった様々な分野で作られ、使われ始めている。ソーシャルメディアやデジタル技術を取り入れたマーケティング業務を行っている企業、ソニー・デジタルエンタテインメント・サービス(東京都中央区)でも、VRの活用は業務上の課題。6月に幕張メッセで開かれたIT関係の展示会で、同社の福田淳社長が講演し、ゲームからライフスタイルへと利用範囲を広げていくVRに積極的に挑む必要性を訴えた。
着物姿の美女がVRヘッドマウントディスプレーを装着し、手にコントローラーを持って動き始める。踊っているように見えて、実はVR空間に絵を描いている。千葉市美浜区の幕張メッセで6月に開かれた展示会で、VRアーティストとして活躍するせきぐちあいみさんによって行われたライブペインティングのパフォーマンス。そのせきぐちあいみさんも作品を寄せる「VR GALLERY by Sony Digital Entertainment」を運営しているのが、ソニー・デジタルエンタテインメント・サービスだ。
同じ展示会で、「VRが変える世界の今」というタイトルで講演した福田淳社長。2016年はプレイステーションVRが発売されたこともあって、「ゲームというイメージがあった」VRが、現在は非ゲーム系へと広がりを見せており、「ライフスタイル系でVRをどう捉えるかに変わっている」と話した。エンターテインメント分野におけるライブの中継、医療分野での優れた技術の継承などにVRが使われている事例を挙げ、スポーツ分野でも、「東京オリンピックまでに、アスリートがコンペティターの技術をVR体験してマインドを上げる」コンテンツが登場してくる可能性を指摘した。
VRギャラリーを立ちあげたのも、そうした変化の波をいち早くキャッチして、自分たちのサービスに利用できないかを考えたため。ほかにもVRチャンネルを開設して、360度映像の4Kライブ配信を行えるプラットフォームを整備した。長くニューメディアと呼ばれる新規の映像やコンテンツの提供に携わって来た福田社長は、経験から「コンテンツの新しい面白さを提供する」ためには、常に新しいことに挑戦していく意識が大切さだと考えている。
携帯電話のiモードでも、初期に大流行した待ち受け画像について、映画業界は絵が動くだけのプア(貧弱)なコンテンツだと冷めた目で見ていたが、すぐに年間の映画興行に匹敵するだけの市場へと成長していった。「これは面白いのではというイノベーターがいた時に、面白いコンテンツができる」と福田社長。VRやAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術が持つ表現の可能性にマッチしたコンテンツを考え、作っていくことでしか次代は担えない。
「新しい機器からクリエイティビティを引き出すのが人間」とも話した福田社長。「VRに限らず、新しいガジェットがサンフランシスコとか東大とかから出てきた時、エンターテインメント業界にいる人が、そんな新しいものが流行るはずがないと言うのではない。取り組んでみて、どう面白いのか試していくことで、自分にも社会にも貢献できる」。新しいテクノロジーやメディアに積極的に挑戦してく必要がありそうだ。
VRを使った観光案内や製品プロモーション、サービス紹介、報道といったコンテンツを作って提供したい。そんなニーズに応えた製品も登場してきた。ネットワークコンテンツの企画・開発などを手掛けているアルファコード(東京都文京区)が開発したコンテンツ管理システム「VRider DIRECT」は、スマートフォンに取り付けた360度カメラで撮影した動画を、VR空間の中で編集して文字や記号などのデータを貼り付け、スマートフォン向けに展開できる。
「VRを民主化するサービス」というのが、アルファコードの水野拓宏社長によるアピールポイント。「VRコンテンツを作りたい人が作って、手軽に見てもらえるようにする仕組み」とも話して、これを使うことで「VRに縁遠かった人でも作ってみたい、人に見せてみたい」と思えるようになると訴えた。
「VRider DIRECT」は、VRコンテンツの撮影から編集、管理・配信、閲覧までをサポートする。撮影では、スマートフォンに360度カメラを取り付け、アプリ経由でダイレクトに管理クラウドへとアップロードできる。編集では、VRヘッドマウントディスプレーとコントローラーを身に着け、VR空間に自身が入り込むような形で矢印などのガイドを置き、文字を空間に貼り付け、音声も配置していける。パソコンのモニター越しに操作するよりも、VRとして見た場合と同じ環境で制作できるため、ユーザーにとってより適切なVRコンテンツに仕上がるという。
主に実写を使ってのVRコンテンツ制作に向いたシステムだが、3DCGのモデルを取り込み空間内に配置する機能もあるため、ゲームやアニメーションなどのCGキャラクターが登場して、観光地をガイドしてくれるようなコンテンツも作れそう。ゲームに限らないマーケティングやプロモーションといった分野でのVRコンテンツを増やし、利用を促進する製品とも言えそうだ。
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