欧州で排ガス不正再燃 疑惑相次ぐ ディーゼルからEVシフト加速
欧州でディーゼル車の排ガス不正をめぐる疑惑が次々と明らかになっている。2015年にドイツのフォルクスワーゲン(VW)で発覚した排ガス規制逃れ問題を受け、欧州各国が、同様の手口がないか国内外のメーカーを調査したところ、続々と疑いが浮上したためだ。相次ぐ疑惑で欧州を中心にディーゼル車離れが広がる中、将来性を危ぶんで電気自動車(EV)に軸足を移す動きも急だ。
ドイツメディアは12日、同国のダイムラーが08~16年に排ガス規制逃れの違法ソフトウエアを搭載したディーゼル車100万台超を販売していた疑いがあると報じた。今回の疑惑を受けドイツのドブリント運輸相は13日、ダイムラーの幹部を呼び出して説明を求めたほか、関係当局には、事実関係の調査を指示した。ドイツのメディアが運輸省関係者の話として伝えた。
ダイムラーは、VWと同様にディーゼルエンジンの排ガス浄化機能を操作するソフトを使用している。試験場では基準を満たす一方で、実際に路上を走行する際には浄化機能を停止させ、規制値を超える有害物質を排出していた疑いがある。VWのように違法ソフトを使っていれば型式承認の取り消しにつながる可能性があり、ブランドを大きく毀損しかねない状況だ。
排ガス不正をめぐる疑惑はダイムラーにとどまらない。今年1月にはフランスのルノーが排ガス検査の際に窒素酸化物(NOx)の排出量を不正に操作している疑いがあるとして同国検察当局の捜査を受けた。さらに今月には、スズキと欧州自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が、排ガス規制を逃れるため違法なソフトをスポーツ用多目的車(SUV)に搭載していた疑いも浮上している。
相次ぐ不正疑惑の連鎖はVWの排ガス規制逃れで大きな打撃を受けたディーゼル車市場にさらなる逆風になる。英調査会社LMCオートモーティブは、西欧の新車販売に占めるディーゼル車比率が15年の約52%から23年には39%まで落ち込むと予想する。
二酸化炭素の排出が少なくディーゼル車を環境対応車の主力の一つと位置づけてきた欧州メーカーも商品戦略を練り直す。VWは25年までにグループで30車種を超えるEVを売り出し、ダイムラーも22年までに10車種のEVを投入して25年には販売台数の15~25%をEVにするなど電動化に軸足を移す。(今井裕治)
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