GMOネット、第1弾は「医療機関カルテ共有」
クラウドWatch■ブロックチェーンの知見を公開
GMOインターネットはブロックチェーンを利用したプログラムをオープンソース(改変可能・商用可能ライセンス)として公開する「GMOブロックチェーン オープンソース提供プロジェクト」を立ち上げると発表した。また、取り組みの第1弾として「医療機関カルテ共有システム」の提供を開始している。
◆旅先の急病に即応
同社ではブロックチェーン技術を用いた開発を進めており、すでに2016年12月から、ブロックチェーン上に簡単に分散型アプリケーションを構築できる「Z.com Cloudブロックチェーン」と「ConoHaブロックチェーン」のβ版を提供開始している。また実際に、Z.com Cloudブロックチェーンを基盤とした「本人のみ受け取り可能な宅配ボックス」のシステムも実現しているという。
今回発表されたプロジェクトは、こうした研究開発で得た知見を元に、ブロックチェーン技術を活用した新しいサービスの実現・普及を図るべく、実サービス展開が可能なプログラムをオープンソースとして公開しようというもの。
そして第1弾として、Z.com Cloudブロックチェーンを基盤に医療機関カルテ共有システムを構築し、オープンソースの提供を開始した。今後も、さまざまなニーズに沿ったオープンソースプログラムを定期的に公開するとしている。
医療機関カルテ共有システムは、病院の電子カルテや薬局の処方箋データなど、これまで医療機関ごとに分散されていた情報を、患者本人が権限を与えた医療機関内で共有閲覧・書き込み可能とするシステム。
今回提供されるオープンソースを用いてシステムが実サービス化し、導入する医療機関が全国的に拡大していくことで、例えば旅先での急病でユーザーが初めてかかる病院でも、ユーザーが権限を付与すれば、医師が病院内の端末からユーザーの過去の病歴やアレルギー、服用している薬などを的確かつ速やかに把握が可能となるため、診療に役立てられるとしている。
◆コストを大幅削減
従来、こうしたセキュアな情報へのアクセス制御・許可を適切に行うには、その真正性を保証する公正な第三者機関による管理・検証が必要とされる。しかし、第三者機関による管理・検証は、個人や組織の信頼に基づいた労働集約型の手法で行われており、人的リソースが必要となるだけでなく、その仕組みの構築・維持に金銭的コストがかかることが一般的だった。
これに対してブロックチェーンでは、プログラム(コード)によってルールを規定することで、そのルールにのっとった処理を自動化できるため、第三者機関の介在なく手続きを的確に執行できる。
こうして、従来第三者機関が担ってきた役割をブロックチェーンに移し、プログラムで機械的かつ永続的に動作し続ける仕組みを構築することで、人的・金銭的コストを大幅に削減できるとGMOインターネットでは指摘している。
なおZ.com Cloudブロックチェーンでは、独自の仕組みによってセキュリティーや利便性を高めているとのこと。具体的には、ブロックチェーンは透明性が高く改竄(かいざん)による不正を防げる一方、記録データがすべてオープンになるという課題があった。そこでブロックチェーンとは別に機密情報を保管するデータストアデータ格納領域を設置、データストア内へのアクセスコントロールを可能にする仕組みを搭載した。
これにより情報の公開制限が可能なため、ユーザーの電子カルテや処方箋データなどの機密情報は、アクセス権限を与えられた医療機関かつ、鍵を保有する端末だけが閲覧・書き込みを行えるとのこと。
また、Z.com Cloudブロックチェーンで採用しているイーサリアム(Ethereum)を利用する場合、プログラムの実行に対して仮想通貨で手数料を支払う必要がある。しかしZ.com Cloudブロックチェーンでは、この手数料をサービスオーナーが代払いする仕組みを導入しているので、利用者は都度仮想通貨による支払いの必要なく、システムを利用できるという。(インプレスウオッチ)
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