ニガリでヤマビル退治 衣服にスプレー、凝固させ死滅 栃木
■佐野の中里司さんが特許出願
山の中で働く林業従事者や登山者に取り付き、吸血するやっかいなヤマビルの被害が全国的に拡大する中、佐野市の公務員、中里司さん(66)がヤマビル退治用の新たな凝固剤を発明し、特許出願した。ニガリなど人体に影響のない溶液を使い、ヤマビルを凝固させて死滅させる。既に商品化し、8月からホームセンターなどで発売予定。(川岸等)
◇
ヤマビルは陸上に住む吸血性のヒルで、体長3センチ前後。山間部の沢筋などに生息し、人や野生動物に取り付いて吸血する。ニホンジカ、イノシシなどの生息域拡大に伴い被害が増え、林業従事者らの悩みの種になっている。
ヤマビル凝固剤開発の発端は昨年夏、都内の商談会で、長男・延弘(のぶひろ)さん(42)が代表を務める農業、農産物加工業「佐野大黒屋」が出展した際、千葉県の製塩業者から「ニガリの利用を考えてもらえませんか」と相談を持ちかけられた。
中里さんは県南環境森林事務所に勤務する県職員だが、「煮豆調理用の乾燥大豆の生成方法」など特許3件を持つ発明家でもある。業者の要請に熟慮していたところ、佐野市内もヤマビル被害が続出していることを知り、「ニガリをヤマビル退治に使えないか」と思い付いた。
早速、自宅でヒルの一種を採集し、ニガリを付けてみると、ヒルはもだえ死んだ。ニガリの凝固作用だった。「これでいける」と確信し、ニガリの濃度や保湿作用のあるグリセリンを混合するなど試行錯誤を重ねた。実験用のヤマビルを採集するため地元の山に入り、吸血される苦労もあった。
7月上旬、特許庁に特許出願する一方、千葉県の水産会社に商品製造を依頼。業務用「ツカサダウンヒル」(500ミリリットル、税別3600円)をはじめ家庭用など計3種類を商品化した。山地などヤマビルの生息域に入る前に衣服や靴などにスプレーで噴霧して使用する。ヒルが塗布面に接触すると死滅する効果があるという。
中里さんは「林業や農業従事者、ゴルフ場の従業員ら多くの人が、ヤマビルの恐怖から解放されれば」と話している。問い合わせは佐野大黒屋(電)0283・62・2087。
関連記事