超小型光制御回路で網膜に画像投影 弱視者の視覚補助へ 福井大などが研究

 
超小型光制御デバイス(光学エンジン)と眼鏡フレームに実装したときの概略図(福井大提供)

 ■文科省大型事業に採択

 福井大学、日本原子力研究開発機構、福井県は1日、瞳を経由して網膜に画像を投影する超小型光制御デバイス(回路)を眼鏡に取り付けて弱視者の視覚を補助するなどの研究が文部科学省の大型研究事業に採択されたと発表した。スマートグラス(眼鏡型ウエアラブル端末)に使われるデバイスを独自の技術で従来の100分の1の大きさまで超小型化する。小型カメラとつないで網膜に映像を送ることでより明瞭な視界を得ることも可能になるという。平成33年度までの5年間で実用化を目指す。

 福大産学官連携本部は、腕などの人体内部の血管が投影できる医療用眼鏡、自動車運転時のカーナビ情報が投影できる車載用の眼鏡、空間放射線量を色覚化する原子力産業用ビジョンなどスマートグラスでの活用のほか、原子力産業用ロボットへの利用も目指す。

 福大は、光制御デバイスを超小型化するため光の三原色のレーザー(チップ)を合成してつくる画像の技術を5年ほど前に開発。この技術をもとに今回、米粒サイズ(長さ6ミリ、重さ1グラム以下)の超小型光制御デバイスを製作する。眼鏡のフレームに内蔵し、光ビームで画像を眼鏡枠部分の反射板(ホログラフィック反射板)に当てて網膜に画像を投影する。出力の小さいレーザーのため眼球への負担がなく、目が疲れないという。

 文科省採択事業は「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」で地域からグローバル市場への展開が目的。5年間で約6億円の支援が受けられる。

 同本部長の米沢晋教授は「画像をみせるだけでなく、計測への用途など使い方がいろいろ変わってくる。大きな産業市場になる」と期待した。