ジャパネットたかた創業者・高田明氏「社長交代は正解だった」「僕の時にはなかった風景」

 
インタビューに答えるジャパネットたかた創業者の高田明氏

 テレビショッピング番組を自ら司会し、甲高い声の名調子で人気者だったジャパネットたかた創業者、高田明氏が地上波の画面を引退して1年半。ジャパネットは長男の旭人氏に委ね、現在はサッカーJ2、V・ファーレン長崎の社長としてクラブ経営に取り組む。一代で全国区の企業に育てた高田氏に話を聞いた。

 社長交代は正解

 〈2015年の承継時、高田氏は66歳、旭人氏35歳で、まだ早いとの声もあった〉

 「交代は正解だった。本格的なホールディングス体制に移行し、トップダウンだった組織がボトムアップ型に変わった。若手が責任感を持って取り組み、成果を出している。僕の時にはなかった風景だ。年商2000億円近い規模になった会社を社長1人では切り盛りできない。旭人社長はそれを分かっていて組織をつくり直した。4、5年で相当強いグループになると信じている」

 〈一押し商品を徹底して売っていくスタイル。埋もれた商品を発掘したり、新しい使い方を提案したりする力量はメーカーから一目置かれた〉

 「メーカーはつくる人、小売りは売る人という構図が完全に変わったとは思わないが、昔と比べるとずいぶん進化した。メーカーも小売りから上がってくる顧客の声を取り入れるようになったが、まだ足りないと思う。製品開発では顧客の声より自分たちの思いの方が依然強いのではないか」

 魅力的な製品できる

 「日本のメーカーは技術力は高いが、米国のアップルなどと比べるとデザインにしても使いやすさにしても、ユーザーが何を欲しているか見極めるマーケティング力に差を感じる。顧客とじかに向き合っている小売りの声にもっと耳を傾け開発に反映すれば、より魅力的な製品が作れると思う」

 〈通販業界の企業間競争はネット系を中心に激化の一途。宅配危機に発展した〉

 「品数や価格、配送時間ばかりが競争ではない。アマゾンなど大手とは違う独自のアフターサービスなど、われわれが強みを発揮できる隙間はある」

 「注文から1時間以内の配送など、いったん便利さを体験するとそれが当たり前になり、もっともっととなる。企業として社会の役に立ちたくても、経営が立ちゆかなくなっては無理。宅配危機は象徴的な出来事で、消費者が便利さについて考える好機になったような気がする」

 新旧メディア使う

 〈株式市場には上場待望論がある〉

 「上場企業は四半期ごとに業績がシビアに問われるが、企業には数年かけて、じっくり取り組まなければいけない時期もある。僕はもう少し安らかに自分たちのペースでやりたかった」

 〈ネット全盛の時代。テレビショッピングの風雲児は今後のメディアビジネスをどう見るか〉

 「メディア環境が時代とともに変わるのは必然。広告費でラジオがネットに抜かれたとき、ラジオは終わったと悲観論が広がったが僕はまったくそう思わなかった。メディアごとに根強い支持者がいる。新旧取り混ぜてやっていけばいい」

 〈来年11月には70歳だが枯れていない〉

 「セールスは卒業だが、日本を元気にすることが何かできないか考えている。講演や、BSで定期的に出ている番組で各地の皆さんとふれあいたい。ただ当面はサッカー。けっこう忙しくしています」

【プロフィル】高田明

 たかた・あきら 通信販売大手ジャパネットたかた(長崎県佐世保市)創業者。会社勤務の後、父親の写真店に入り1986年独立。地元放送局で始めたラジオ通販が評判になりテレビショッピングに進出した。自ら説明役になり独特の語り口で人気者に。2015年社長を退任。現在はサッカーJ2、V・ファーレン長崎社長。48年長崎県生まれ。