ホンダ、稼ぎ頭「N-BOX」刷新のジレンマ 「軽中心」イメージ定着懸念

 
ホンダが9月1日に発売する「N-BOX」。左は寺谷公良執行役員=31日午前、東京都港区

 ホンダは31日、主力の軽自動車「N-BOX」を全面改良して9月1日に発売すると発表した。最新の安全技術を全車に取り入れたのが特徴。ホンダの国内販売の約3割を占めるN-BOXの新型の月販目標は、従来比25%増の1万5000台で、ホンダの軽販売比率はさらに高まる見通し。かつて定着していた走りにこだわった車づくりのイメージは薄れ、軽中心の印象がますます強まりかねない。

 2代目となる新型は安全装備を充実させたのが特徴だ。初代は、スズキやダイハツ工業の軽に比べ安全機能が弱みだったため。自動ブレーキや後方への誤発進を防ぐ機能など独自の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を装備した。

 希望小売価格は138万5640~208万80円。2011年12月発売の初代は、広い室内空間が受けて軽の年度別の新車販売台数で4回首位となるなど大ヒットした。新型は初代の販売目標から3000台も上積みするなど強気の計画を打ち出し、国内軽市場で独走につなげたい考えだ。

 ホンダにとってN-BOXは国内最量販車種であり稼ぎ頭の車。しかし、売れ過ぎで悩ましいのがブランドイメージに与える影響だ。若者を中心にホンダ車に「軽とミニバン中心」という印象が根付きつつあるからだ。そうしたイメージを変えるため、ホンダはスポーツカー「NSX」を昨年復活させ、今年9月には乗用車「シビック」を国内再投入。デザインや走行性を重視したモデル投入で、ホンダ車全体のブランド力向上につなげる狙いだ。

 しかし、その一方で、N-BOXの新型が堅調に販売を伸ばして、街中で見かける機会が増えれば、軽中心のイメージはますます強まりかねない。東京都内で開いた発表会で寺谷公良執行役員はホンダが抱えるブランドのジレンマについて「スポーティーなシビックと、生活を豊かにするNシリーズをどう包含したブランドにするかは課題だ」とした。目先の販売が稼げる軽の扱いとブランドイメージの両方をてんびんにかけながら、ホンダが難しいかじ取りを迫られている。