旭化成 能力ある情報検索技術者の育成不可欠

インタビュー

 □旭化成知的財産部 技術情報グループ長・中村栄さん

 --2016年度の特許情報普及活動功労者表彰で特許庁長官賞(特許情報人材育成功労者)を受賞した

 「特別なことをしてきたという認識はない。これまでの活動が、結果としてサーチャー(情報検索技術者)の『育成』につながったということだと思う。旭化成は1998年には全社の調査を一手に担当するセクションを設置。私もここに異動し、調査との関わりが始まった。他社をみても、当時特許情報は研究者自身が調べるのが一般的で、検索手法もまちまち。重複した調査がなされることもしばしばあった。そこでサーチャーのスキル向上と調査結果の有効活用が必要だと感じた」

 --特許情報の現状と調査の重要性をどう考えるか

 「日本企業に限らず、いまでは多くのメーカーが世界の市場で事業を展開している。当然、それらの市場における特許情報も調査が必要になる。自由に事業ができるかどうかについての特許調査(FTO調査)が重要だというわけだ。加えて、中国のように非常に多くの特許を申請する国も出てきた。特許侵害などに関連する大きな訴訟も頻繁にみられる。しかし、決定版といったような手法はない。こうした状況の中で精度の高い調査が求められている。そのためにも、能力のあるサーチャーの育成が不可欠だ」

 --サーチャーには何が求められているのか

 「技術のことをよく理解している必要がある。知的財産権などの制度や仕組みに関する知識も必須だ。そしてコミュニケーション力。なかでもコミュニケーション力は重要だ。研究者の意図をきちんと理解したり、チーム内で情報を共有しないといけないからだ。今後は人工知能(AI)の活用など、調査手法も変化していく。そういう動きも視野に入れ、戦略的に活動できる情報のプロが育つことに期待している」

                  ◇

【プロフィル】中村栄

 なかむら・さかえ 1985年、旭化成入社。繊維基礎研究所に勤務。89年、知的財産部。98年、知的財産部に技術情報センター(現・技術情報グループ)が発足したのに伴い、同センターに異動。2009年4月から現職。