柏崎刈羽、13日にも「合格」 再建へ一里塚、政策正常化期待
原子力規制委員会が柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の審査で合格を出す方針を固め、東京電力の経営再建は一里塚を迎える。東日本で多数を占める沸騰水型軽水炉(BWR)は福島第1原発事故後まだ1基も動いておらず、実現すれば原子力政策の正常化にも一役買いそうだ。ただ、地元・新潟県の反発など乗り越えるべき課題は多く、再稼働の時期は見通せない。
東電が総額22兆円に上る福島原発事故の処理費用をまかなうには、年間5000億円程度を安定的に捻出する必要がある。2016年度は廃炉や賠償などで約3000億円を確保した。今後は原子力や送配電事業で他社と再編・統合を進めるなど収益力を高め、残りを埋める。
6、7号機が動けば火力発電の燃料費を圧縮でき、不足分に相当する年間最大2200億円の収支改善が見込める。柏崎刈羽の再稼働が東電経営再建の鍵を握ると言われるゆえんだ。
加えて、柏崎刈羽の合格は原発の“西高東低”解消にもつながる。これまで規制委の“お墨付き”を得たのは6原発12基で、いずれも西日本の加圧水型軽水炉(PWR)だ。東日本の各社は東電の審査対応を参考にしていたため、東電の遅延が全体の遅れを招いた。
関西電力が高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働で8月から電気料金を値下げするなど、発電コストが安い原発の稼働は光熱費負担の軽減につながる。日本の産業競争力を維持するためにも、再稼働の動きを東日本に広げる必要がある。
だが、東電幹部は「(規制委が認めてくれるのは)ありがたい話だが、まだ再稼働を世の中に問う出発点に立ったに過ぎない」と説明する。規制委が承認した審査書案はその後パブリックコメント(意見公募)にかけられ、さらに厳しい批判にさらされるからだ。
事故を起こした当事者の東電が再び原発を動かすことにアレルギーが強いのは事実。新潟県の米山隆一知事は「事故の検証に数年は必要」と指摘しており、審査に合格してもまだ再稼働の見通しは立たない。規制委の合格を一日も早い再稼働に結びつけられるよう、東電は地元自治体の説得に全力を挙げねばならない。(田辺裕晶)
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【用語解説】沸騰水型軽水炉(BWR)
原子炉の中で水を沸騰させ、発生した水蒸気を発電用タービンに直接送るタイプの原発。構造が比較的単純で建設費も安く済む利点があるが、蒸気に放射性物質が含まれるため安全管理が難しい。国内では事故を起こした福島第1原発を含め東日本に多い。
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