日本のゲーム会社がベトナムでRPGを開発して直面した課題と解決法とは
日本で企画したRPG(ロールプレイングゲーム)をベトナムで作る。そんな試みに挑戦したのが、ゲーム開発会社のGIANTY(東京都渋谷区)だ。高いスキルを持ちながら、人件費は日本の2分の1から3分の1というベトナムでクリエーターを集め、PCゲーム配信プラットフォームのSteam向けに、「GOKEN」というゲームを10カ月で作り上げ、7月末から提供を開始した。もっとも、完成までには日本とベトナムとで異なるクリエーターの意識をすり合わせ、相手のやる気を引き出すようなマネージメントが必要だった。
日本側からベトナムへと開発に当たっての注文が出される。「ゾーン1のマップの改善をお願いしたいので仕様書を送ります」。ベトナムからはすぐ「仕様書を確認します」とメールが来る。翌日も同じゾーンについて改善を依頼するが、ベトナム側から「確認します」といった返事とともに、「これは本当に必要な改善なのか?」と疑問が寄せられた。
どうして同じマップに何度も手を入れるのか。「ゾーン1以外でも同じように改善を求められると、リリースまでに対応できなくなる」という不安がベトナム側にはあった。ここで日本側のスタッフが、ゲームでも導入部にあたる序盤のマップは徹底的に調整する必要があることを、ベトナム側が認識していないことに気がついた。
8月30日から9月1日まで、横浜市西区にあるパシフィコ横浜で開かれたゲーム開発者向けカンファレンスのCEDEC2017で、GIANTYが「GOKEN」をベトナムで開発した時に起こった様々な問題が明かされた。序盤に対する意識の違いもそのひとつ。日本の開発陣には当たり前のことでも、今回が初体験となるベトナムの開発陣には不思議に映った。以後のゾーンでは修正の繰り返しは起こらないこと、そして「自分たちがやりたいと思っていることを、何のためにやるのか明確に伝える」ことで相手の理解を得て、開発は進んでいった。
以前からRPGのタイトルを作りたかったGIANTYだが、日本では人件費が高くて時間もかかる。中国や韓国なども人件費の高騰が続いている。そこで目をつけたのがベトナムだった。ベトナムは国策として情報通信技術大国を目指していて、2020年度にGDPにおけるIT産業の比率を10%まで高めようとしている。IT教育にも熱心で、優れた人材が生まれて来ている。こうした人材を活用し、創造性を発揮してもらいながら日本側が望むものを作ろうとした。
「GOKEN」の開発に当たってGIANTYが組んだ体制は、日本人が3人で、ベトナム人はコアメンバーが各部に2人から3人いて、担当部分が終わったら他のプロジェクトに移るフレキシブルな人たちも加えて35人ほど。ミニマムで効率の良い開発体制が築けたが、そこで意識の違いによる様々な問題が起こった。
リリースが間近に迫った時のクオリティアップ作業でもギャップが生じた。日本側からベトナム側にバグの改善を依頼したが、ベトナム側が修正してきたのは演出やエフェクトといった部分。GIANTYでプランナーを務める中村蒼さんによれば、「日本ではクオリティを良くすることは悪いものを無くすことで、良いものをさらに良くすることではない。しかしベトナムは、グッドをベターにすることを考えていた」。だからすれ違った。
新機能の開発を依頼して納期を月末に設定すると、まだバグがあるものを納期ぎりぎりに仕上げてきた。日本側の感覚では、納品までにテストを行って、バグを修正したものを納めるのが普通。ベトナム側ではとにかくひととおり完成させたものを納め、そこから手直しをしていくという意識が強かった。こうしたさまざまなギャップについて話し合うことで、「GOKEN」は完成へと近づいていった。
ここで大切なのは、「“発注者-受注者”という関係から一歩踏み出して、ベトナムのクリエーターが自ら考えて行動できる環境を作ることだ」と、GIANTYでコンテンツ事業部ディレクターを務める三原龍磨氏は指摘する。「はじめはこちらも相手を信用せず、出来ないだろうと思っていたし、向こうもそんな考えだったらやらないといった感じだった」と三原氏。そこを改め“謙虚・尊敬・信頼”の3つを大切にすることで、相手も本来持っている高い能力を発揮できるようになった。
三原氏によれば、当初は日本で仕様書を作って、ゲームが進行するきっかけの設定も日本で行っていた。途中から「これをやりたいですとだけ伝えてみて、一度試させてみるようにした。はじめはミスも多かったが、何度もクラッシュ&ビルドでやっていくうちに出来るようになった」。自分たちが考えて作り上げたものには、ダメを出されても不満を言わず、どこが悪かったかを聞いて取り入れ、改善するようになっていった。
「自ら考え,行動出来る環境を与えるとチームが変わった。自分からこうしたい、やらせてくれといった意見が出るようになっていった」と三原氏。ゲームに限らず日本が世界の優れた人材を活用しながらプロジェクトを進める上で大切なことが、GIANTYによるベトナムとのゲーム開発には詰まっていると言えそうだ。
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