ウェブサイトの多言語化を5分で実行
日本発!起業家の挑戦□ミニマル・テクノロジーズ共同創業者ジェフ・サンドフォード氏に聞く
翻訳やソフトウエア・ウェブサイトのローカリゼーションの業界では、この10年間に目覚ましい進歩が見られた。しかし、そうした革新的な動きの裏で、実はさまざまなところでかたくなに変化に抵抗する側面も持ち合わせている。
ウェブサイトの多言語化を実現するWOVN.io(ウォーブンドットアイオー)は、1行の専用コードをHTMLに挿入するだけのシンプルな作りで顧客企業をひきつけている。運営する株式会社ミニマル・テクノロジーズ(東京都港区)の取締役で共同創業者のジェフ・サンドフォード氏に話を聞いた。
◆海外展開に意欲
--WOVN.ioのサービスでできることは
「ウェブサイトのローカリゼーションと言うと、文章の翻訳のことだと思う人が多いです。しかし、それだけでは終わりません。WOVN.ioは、多言語対応ウェブサイトを作るための細かな作業をこなすプラットホームを提供し、もちろん翻訳も済ませます」
--ローカリゼーション業界には多数の企業がありますが、WOVN.ioはミニマリスト(最小限主義者)のアプローチをとっています
「そうですね。専用のコードを1行埋め込むだけで私たちのシステムはすべてインストールされ、ウェブサイト全体を5分程度で多言語化することができます。顧客の多くはまず無料の自動翻訳版を試してみて、後から人の手による翻訳で修正する方法を取ります」
--2014年に林鷹治(たかはる)氏とミニマル・テクノロジーズを創業されました。きっかけは
「実は2人は会う前に、一緒に起業することを決めたんです」
--詳しく教えてください
「友達の結婚式でアメリカに帰っているときでした。東京の友達が電話をかけてきて、『林さんという知り合いが、英語が話せてグローバルな経験を持つ、テクノロジーの分かる人と会社をつくりたいと言っているんだが』と言うんです。私はエンジニアで、おもしろそうだなと思ったのでスカイプで林さんとのミーティングを設定しました」
--では、起業前に会ったんですね
「一応は。でも、直接会ったことはありませんでした。スカイプで話している間に起業を決意しました」
--多国籍のスタートアップだと聞いています。日本で多国籍というと、エンジニアが外国人で営業や事務・管理業務を日本人が担うことが多いですが、どんな構成ですか
「私たちの成り立ちも同様です。開発チームは外国人と日本人の比率が半々で、営業やサポートはほとんどが日本人です。現状では顧客が日本の個人・法人なので、合理的です。社内の言語は開発に関しては英語で、その他は日本語です」
--サービスを海外展開する計画はありますか
「もちろんです。実はWOVN.ioの製品デザインは多くの点で日本よりも欧米的な作りです。社名からも分かるかもしれませんが、ミニマリストのアプローチをとっています。日本企業の多くはどちらかといえば無秩序のサイトを持っていて、ユーザーからできる限りの情報を集めようとします。一方、私たちはできる限りサイトをシンプルにしたいと思っています。ユーザーには、サービス提供のために明らかに必要なこと以外は何も尋ねませんし、頼みません」
--デザインの違いは興味深い指摘ですが、最終的には結果を測定してうまくいく方法を取るべきではないのですか。たとえば、無秩序なサイトの方が物が売れるなら、その戦略を選ぶべきなのでは
「たしかに、伝えたいメッセージやサイト・製品のデザインはユーザーの好みに合わせていくのが良いでしょう。それぞれのページに情報が多い方が日本の消費者には好まれますから、日本市場向けにはそのようなデザインにするのが最適だということになるでしょう」
--そこがローカリゼーションの難しいところなのでは。各市場で効果的なサイトにするには、文章を翻訳して画像や図表を差し替えるだけでは十分ではなく、情報提示の仕方をまるごと考え直さなければならない
「そのアプローチはマーケティング専用のランディングページや広告キャンペーンのローカリゼーションに適した考え方です。コピーライティングや見せ方が結果を左右するからです。しかし、それぞれの言語のために全サイトを作り替えるのは実用的ではありません。各市場向けに異なる見せ方をしたい情報もあるかもしれませんが、企業のアイデンティティーを保ち、一貫性のある情報提供をすることをも大切です。一般的には、99%のページについて直接的なローカリゼーションが最適なアプローチだと思います」
--ページごとにアプローチを変えるのですか
「はい、WOVN.ioではそれが可能です。例えば製品仕様などの情報については、最もベーシックなプランで用意している自動翻訳が適しています。Eコマースページに掲載する商品詳細説明などのコンテンツについては、SaaS(必要な機能を必要な分だけ利用できるサービスとしてのソフトウエア)で提供している、人の手による翻訳を使えばよいでしょう。しかし、マーケティング用の資料や会社のランディングページなどについては、伝えたいニュアンスを正確に反映してもらうために翻訳の専門家と密にコミュニケーションを取るのが理想的といえます。WOVN.ioはこのすべてに対応していますので、組み合わせて使っていただければいいと思います」
◆規模拡大に注力
--顧客の多くがEコマースサイトだそうですね。しかし、ウェブサイトが多言語化しても社内が多言語化するわけではなく、ビジネスを外国語で行う準備はできていないと思います。ドイツ語や中国語で急にEメールが送られてくるようになったら、顧客はどのように対応していますか
「たしかにそれは問題で、顧客はそれぞれ異なる対応をしています。比較的規模の大きい企業では、社内に各言語の専門家が既にいて、WOVN.ioをローカリゼーションの目的でのみ使っているので大きな問題はありません。他の企業は様子を見ながら順次対応を検討しています。こうした多言語でのメール対応は私たちが将来備えたい機能の一つですが、まだ詳細は説明できません」
--多言語メール対応が今すぐリリースされないのであれば、現在最も注力していることは何なのですか
「事業規模の拡大です。顧客が増え続け、翻訳が必要なページを何千、何万ページも持つサイトが多くなってくると、高いパフォーマンスを維持し、素早く自動的に大量のサイトをローカライズできる新しい方法を編み出さなければ成長が止まってしまいます。世界中で翻訳されたウェブサイトを見る人の側で表示に時間がかかることも避けなければなりません。ユーザーとサイトが今後も増加することをふまえた体制を急ピッチで整えています」
国境や言語の壁を越えた貿易が中小企業の間でも増加している現状で、ミニマル・テクノロジーズのような企業には世界市場に大きなチャンスが見えている。また、日本市場での見通しも明るい。観光・インバウンドの重要性が増し、3年後にはオリンピックも控えているため、ローカリゼーションの需要は高い。
詳細は明かされなかったが、WOVN.ioがEメールやカスタマーサポートといったローカリゼーション業界でのニッチ市場にも挑戦する計画があるのは大変興味深い。小規模のスタートアップにとってはカバーすべき機能が多く難しい印象だが、多くの企業が必要としているサービスであり、この市場を独占する企業はまだない。
過去10年で大きく変わった翻訳、ローカリゼーション業界が今後5年間でどんな変化を見せるのか。日本を中心にイノベーションが生まれる兆しがあり、楽しみだ。
文:ティム・ロメロ
訳:堀まどか
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【プロフィル】ティム・ロメロ
米国出身。東京に拠点を置き、起業家として活躍。20年以上前に来日し、以来複数の会社を立ち上げ、売却。“Disrupting Japan”(日本をディスラプトする)と題するポッドキャストを主催するほか、起業家のメンター及び投資家としても日本のスタートアップコミュニティーに深く関与する。公式ホームページ=http://www.t3.org、ポッドキャスト=http://www.disruptingjapan.com/
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