働く女性のためのワンピース提案 アユワ・渡部雪絵社長
働く女性をターゲットにしたオリジナルデザインのワンピースを手がけるアユワ。ブランドの立ち上げからまもなく2年を迎える。社長の渡部雪絵さんが最初に考えたのは婦人服とはまったく別のビジネスだった。
◆始めは「紙おむつ」
渡部さんは大学卒業後、銀行で法人営業、報道機関で金融担当記者、証券会社の法人業務などを経験。2012年に第1子を妊娠した当時、務めていたファンド運用会社では契約社員だったこともあり、上司から退職を勧められてしまった。
その後、週3日勤務のコンサルタント会社で働き、出産を迎える。仕事を続けるために保育園探しをする中で、「起業やフリーランスで働く人でも、子育てと仕事が両立できるような社会システムを自ら作りたい」と起業を考えた。
そのときに思いついたビジネスプランは、オーガニックコットンを使った子供用紙おむつの製造販売だった。当時、海外製で近いものはあったが、オーガニックコットンでできた日本製の紙おむつはなかった。
事業計画書をまとめ、知り合いのあるベンチャー企業役員に相談したところ、「子供が20歳になったときにそのビジネスを続けたいか」と聞かれ、返答に窮した。「もし生活に困っていないのなら、好きなことをもう少し広げて考えたらどうか」とアドバイスされた。
ビジネスプランを練り直し、ワンピースに目を付ける。簡単に着こなせることから、基本の仕事服はワンピースだった渡部さん。「100%、納得できるワンピースには巡り合えたことがない。だったら、オリジナルのワンピースを作って働く女性に提案したい」とアユワを立ち上げた。
アユワのコンセプトは「エレガント」と「エシカル」。エレガントは言うまでもなく、“優雅”なデザイン。胸元にファスナーを配した「フロントファスナーワンピース」は、胸元を最も美しく見せる開き具合に調整できるうえ、キャミソールを組み合わせればいやらしさを感じさせない。
◆実用性にもこだわり
デザインだけでなく実用性にも気を配っている。働く人は常に名刺や携帯電話を持つことから、ワンピースにポケットを付けている。さらに全アイテムを自宅洗いできるため、クリーニング店に行く時間がない働く女性にはありがたい。
もう一つのコンセプト、エシカル(倫理的活動)では、「チャリティープログラム」を立ち上げ、1商品につき500円を子育て支援や文化・スポーツ振興の活動に寄付している。オンラインショップでは購入者が寄付先を指定できる。
さらに渡部さんが大切にしていることは日本のものづくりだ。縫製は国内2社に委託している。渡部さんは「多くのアパレルが海外に工場を移した今でも、やはり日本の縫製技術は高い。後継者難などの課題は山積しているが、私たちのようなベンチャーが応援することで、国内縫製産業の成長に役立てられれば」と話す。
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【プロフィル】渡部雪絵
わたなべ・ゆきえ 早大商卒。2002年三井住友銀行入社。05年日経QUICKニュース社、08年三菱UFJ・モルガンスタンレー証券、12年ファンド運用会社を経て、15年DressPress(現アユワ)を設立し、社長に就く。37歳。神奈川県出身。
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【会社概要】アユワ
▽本社=東京都港区白金4-6-17-208
▽設立=2015年8月
▽資本金=700万円
▽従業員=5人
▽事業内容=婦人服の企画、販売など
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