ドローン高校生、地域活性化に一役
ドローンタイムズ■福島・田村、国の承諾取得しフェスなどで活躍
福島県立船引(ふねひき)高校(福島県田村市)の「ドローンチーム」の生徒たちが、市の総合防災訓練や野外音楽フェスで堅実なフライトの腕前を披露し、市民に頼もしい姿を示した。昨年12月、慶大と田村市が人材育成や地域活性化などの課題解決を模索する“ドローン連携協定”を結んだことから、同校での特別講座がスタート。そこで初めてドローンに触れた生徒達は今や、地元の“ドローンの専門家”と仰がれ、地域の活性化に一役買っている。(村山繁)
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10月1日に同市内で開催された総合防災訓練では、はしご車、タンク車、ポンプ車などの消防車両に加え、空を舞う3機のドローンと、揃いの青いビブス(作業用ジャケット)を着た高校生ドローンチームが目を引いた。生徒達は防災訓練の一貫として、市を代表して訓練の様子を空撮した。
「訓練」とはいえ本格的だ。快晴の中で行われはしたが、「台風接近に伴い強い雨が断続的に続く中、午前6時10分に福島県沖を震源地とする地震が発生し、田村市でも震度6を観測した」という緊張感の高い想定だ。航空自衛隊、陸上自衛隊、市民団体など幅広い参加者が「訓練という名の本番」(参加者)の意気込みで取り組んでいることが、見ている側にもストレートに伝わる。
◆地元市民「頼もしい」
ドローンは、倒壊家屋の下敷きになった救難者の捜索活動や救助活動、参加者の真剣な表情を空からとらえ、会場に準備された大型モニターに映し出した。操縦は堅実で、カメラは巧みに参加者と活動を追った。会場では訓練を説明するアナウンスが流れている。「ドローンを飛ばしているのは、船引高校の生徒達です」と響くと、事態を見守る市民が「すごいね。(地元の)ふなこう(=船引高校)の生徒ですって。頼もしい」と目を細めた。
生徒達がドローンに初めて触れたのは昨年12月だ。田村市が、ドローン研究に力を入れる慶大と連携協定を結んだことを機に、協定に基づく活動の一環として市内の県立高校でドローン特別講座を開くことになった。
ドローンについて機体の性能、特徴、安全確保の方法、応用範囲の広さなどを学び、ホバリング(空中制止)、人物の動きに帯同するサイド・バイ・サイド、被写体をとらえながら周りをぐるっと囲むノーズ・イン・サークルなどの操縦、操作を体育館や校庭で身に付けた。学校で撮影した映像を編集し、コンテストに応募したり、社会課題のドローンでの解決法を市民の前で発表したりした。
特別講座には慶大SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹事務局長が毎回欠かさず訪れ、独自に開発したプログラムを持ち寄った。回によっては福島ドローンスクールの小林康宏代表、糺の森(東京)のオペレーター、土方愛玲奈さん、映像クリエイターの本白水智也さんほか専門家も訪れ生徒を応援し励ました。地元出身者が創業した測量会社は100万円分の機材を寄贈した。
生徒は回を重ねるにつれてうまくなった。ドローンへの理解と愛着も深まった。「将来はドローンを使う仕事に就きたい」「体験会を開きたい」という生徒も出てきた。
8月、練習実績をふまえて国土交通省に飛行許可を申請した。9月上旬に、生徒14人の名前が記された承諾書が届いた。ドローンの飛行について、国のお墨付きをもらった。
◆学校に撮影依頼も
9月9日、田村市初の野外音楽フェスが総合運動公園で開かれた。会場の様子を空撮し、来場者向けの体験会も催すことになった。「ドローンチーム」と名の入ったビブスは、この時に初めて着用した。会場では多くの関係者から声をかけられた。伊豆幸男校長は「多方面から撮影依頼が寄せられています」と話す。
田村市の特徴を尋ねられると「うちには何もないよ」と答える市民が多いという話を聞く。そろそろその言葉は人々の口にのぼらなくなる。フェス、防災訓練で活躍した船引高校のドローンチームは、今や田村市の「特徴」となり、彼らの撮影した映像が市の「特徴」を発掘、再発見していくからだ。
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