日本の洋上風力発電が巻き返し 進む法整備、大型プロジェクトが相次ぎ始動

 
国内の洋上風力発電設備=千葉県銚子市沖

 海上に風車を設置し、得られた電気をケーブルで陸上に送る洋上風力発電。日本は欧州に比べて普及で後れを取ってきたが、ここにきて巻き返しの機運が高まっている。発電事業者の参入を促すルール整備が進みつつあるからだ。政府は2016年7月施行の港湾法改正で、港湾内における事業者の公募手順を定めたのに続き、より沖合の「一般海域」についても法整備の検討に入った。事業者が参入しやすくなれば、競争が促され、発電コストの低減などにつながると期待されている。

 まずは港湾周辺から

 昨年の港湾法改正では、港湾管理者が発電事業者を公募によって選べるよう、手順を定めた。併せて、認定された場合の期間が最大10年間から20年間に拡大された。

 日本の港湾は貨物船の寄港地として使われている場合が多い。ただ、港湾周辺には発電所が多く、電力系統に接続しやすいメリットもある。このため、まず港湾での事業化を目指す事業者が少なくない。改正は、こうした事業者にとって大きな後押しとなる。

 一方、一般海域は国有財産法が適用される「公共用財産」で、国が自治体に管理を委託している。各都道府県が独自に条例を定め、占有許可を与えているのが現状。認定期間も3~10年とまちまちだ。

 改正についての検討は内閣府を中心に経済産業、国土交通、環境の4府省が横断的にしているが、占有年数を港湾同様、20年程度に延ばす可能性がありそうだ。長期占有が可能になれば、事業者は事業化の可能性を予見しやすくなり、資金集めも容易になりそうだ。

 ルール化の要望は以前から寄せられてきた。経団連は、事業者が一般海域の長期専用を求めた際に、自治体にとって参考となるガイドラインの整備を提言。政府も13年に定めた「海洋基本計画」で「海洋再生可能エネルギーの利用促進」を盛り込み、その一環として洋上風力の普及を図ろうとしている。現在検討中の新法は、そうした流れに沿ったものだ。

 洋上風力は太陽光と違って夜間も発電できる。陸上風力と比べても強い風を安定的に得られるほか、設置面積を広く取れるため風車を大型化しやすい。国土面積が狭く、四方を海に囲まれた日本は、洋上風力向きとされる。

 大型プロジェクト始動

 このため日立キャピタルなどが約1000億円をかけて茨城県の鹿島港で設置を計画するなど、大型プロジェクトが相次ぎ始動。発電設備を手がけるメーカーも絶好の商機ととらえ、三菱重工業とデンマークの風力発電設備大手ヴェスタスの合弁会社、MHIヴェスタスは、日本市場に本格参入し、営業拠点を設けることを検討している。

 ただ、遠浅の海岸が多い英国やドイツには大きく後れを取っている。最近は基礎を海底に固定する従来の「着底式」に加え、沖合のより深い場所に設置可能な「浮体式」の開発が進み、日本はその普及とともに巻き返しを図ろうとしているが、まだまだ差は大きい。それどころか、投資の誘致に積極的な同じアジアの台湾にも後れを取りつつある。

 洋上風力は、建設・維持コストが高くつきがちで、漁業権を持つ漁協の理解を得る必要もある。日本の場合、それらに加えてルールが定まっていないことが障害となってきた。逆に法整備が進めば事業者にとってハードルはかなり下がる。経団連は将来的に浮体式だけで「50兆円規模の経済効果が見込まれる」とする。洋上風力の普及は、環境負荷低減や脱・原発依存にもつながるだけに、一刻も早いルール化が待たれる。