ハッキングによる事故、政府が保障 自動運転車、官民タッグで開発競争に先手

 
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 政府が、ドライバーが運転に関与しない完全自動運転車による交通事故の賠償責任について、外部からのコンピューターシステムへの悪質なハッキングが事故原因の場合、「政府保障事業」として国の特別会計から被害者の損害を補填(ほてん)する方向で最終調整に入ったことが29日、分かった。自動運転システムが乗っ取られた状態での事故を「盗難車による事故」と同一にみなす。

 現行の自動車損害賠償保障法(自賠法)では原則、車の所有者やドライバーらが責任主体となる。ただ、盗難車や無保険車による事故などでは、所有者らが加入する自動車損害賠償責任(自賠責)保険からの保険金は支払われない。

 被害者への損害補填金は政府保障事業として国土交通省の自動車安全特別会計から支払われ、加害者が判明した時点で支払額を請求している。完全自動運転車の事故も同じ扱いにする。

 完全自動運転車ではハッキングのほか、システムの誤動作も事故原因になり得るため、政府が検討を進めてきた。

 自動運転車の責任範囲については、年度内にも政府が取りまとめる自動運転の「制度整備大綱」に方向性を盛り込む。

 自動運転技術をめぐっては、アクセルやブレーキなどの複数の操作を自動で行う乗用車などが既に市販化されている。今年5月に決定した自動運転などの国家戦略「官民ITS構想・ロードマップ2017」では、政府は25年をめどに完全自動運転車の実用化を目指している。

 一方で、開発の障壁となっていたのがドライバーによる運転を前提としている現行の交通関連法規。国連の専門家会議では日欧を中心に車両安全基準の議論が進められている。だが複雑化が見込まれる事故時の責任関係が不明確なままでは、基準策定に向けた公道実験などの遅れが見込まれるほか、過度な責任負担を恐れたメーカーが開発に及び腰になる恐れがあった。

 世界の自動車メーカーやIT関連企業が開発競争にしのぎを削る中、政府は責任範囲の設定を急ぐことで日本メーカーを支援する構えだ。(佐久間修志)