「ウイイレ」盛り上げた世界の“一流選手”たち e-Sprotsにスポーツ産業も関心

 
大きなスクリーンに投影された対戦を見て観客は展開に一喜一憂する

 e-Sportsへの関心が高まっている。ゲームを使って対戦したり、そうしたプレーを見たりして楽しむエンターテインメントで、最近ではこれをサッカーや野球、スノーボードといったリアルなスポーツと同様にとらえ、プロ選手による対戦を行い、会場やネットで観戦してもらうようなイベントも増えている。プロとして世界で活躍する日本人選手も生まれ、オリンピックなど正式種目化といった動きも出始めており、今後ますますe-Sportsという言葉を聞く機会が増えそうだ。

 ◆世界の“一流選手”が来日

 日本サッカー協会が入り、日本サッカーミュージアムもある東京都文京区のJFAハウスに1月14日、サッカーをプレーする選手たちが集まった。といっても、フィールドに出てボールを蹴るプレーヤーではなく、サッカーゲームで戦う選手たち。コナミデジタルエンタテインメントが提供しているサッカーゲーム「ウイニングイレブン2018」(ウイイレ)を使ったe-Sportsの大会が、リアルなサッカーの殿堂とも言える場所で開かれた。

 ウイイレの世界チャンピオンを決める「PES LEAGUE WORLD TOUR 2018」のアジアラウンドで、午前中から行われたグループステージと準々決勝を勝ち抜いた4人が夜からの準決勝と決勝に臨み、フランスから参加のTioMiit_PW選手が接戦をしのいで優勝を果たした。

 日本から参加した選手の2人が準決勝に残ったものの、いずれも敗退して決勝には進めなかった。ただ、両選手とも僅差での敗退で、今後もアメリカラウンド、ヨーロッパラウンドと続くワールドツアーでの活躍次第で、決勝大会へ進んで世界チャンピオンに輝く可能性も小さくはない。

 決勝に残ったもうひとりは、スペインから参加のjosesg93選手。ほかにも、前回チャンピオンでブラジルから参加のGuiFera選手、前回2位となったイタリアのEttorito97選手ら世界のトッププレーヤーが来日した。応援も含めてさまざまな言語が飛び交う会場は、さながらワールドカップのようなスポーツの世界大会に来ているよう。日本サッカーミュージアムのバーチャルスタジアムという会場、サッカー元日本代表の北澤豪さんによる解説も相まって、スポーツの大会といった印象を後押しした。

 ◆リアルと同じ面白さ

 プレーする選手の雰囲気も、ゲームをしているといったものではなくなっている。試合が始まる前に選手を選び、ポジションを細かく調整して勝利を目指すところはサッカーチームの監督と同様。プレーが始まれば、コントローラーを細かく操作し、攻撃や守備を行う必要があって、反射神経や運動神経を要求される。トップ選手がそろっていただけに、準決勝の2試合と決勝はいずれも1点差での戦いとなり、観戦者の目も自然と試合に奪われていった。

 試合が始まってすぐ2点をリードした選手が、安心からか1点を返され、さらにもう1点と続けざまに得点されたシーンは、実際のサッカーで2対0が“危険なスコア”と言われ、逆転劇が起こりやすい例を踏襲しているかのようだった。バーチャルな対戦であってもリアルと同じ面白さが味わえることが、e-Sports市場の拡大を後押ししていると言えそうだ。

 リアルという意味では、ゲームの世界でもリアルなサッカーと同様に、プロとして戦って賞金やスポンサーからの契約金を稼ぐプロゲーマーがいる。日本人選手で、サッカーゲームの「EA SPORTS FIFA」シリーズで戦っているマイキー氏もそのひとり。2017年8月に開催された、ワールドカップを主催する国際サッカー連盟(FIFA)が開いた世界最高峰の大会にも、予選を勝ち抜いた32人の中に入って出場を果たした。

 ◆学生時代にプロの道へ

 デジタルハリウッドで17年11月に講演を行ったマイキー選手は、「デジハリに通っていた学生時代に『ウイイレ』の大会があって、全国大会で優勝して世界大会にも行かせていただいた」ことから、今のプロゲーマーへの道を歩み始めたと明かした。当時は「ゲームをしながらお金をいただいて生活しているプレーヤーもまだ珍しかった。自分も趣味の範囲で練習はしていたが、それで生活しようというのはなかった」という。

 それでも「出るからには優勝したいと思っていた」が、世界の大会で強豪たちとあたって自分との力の差を感じ、勝つためにいろいろと考え始めた。「リアルのサッカーでもスペイン代表とブラジル代表の戦い方は違う。スペインだとパスでつなぎブラジルやアルゼンチンは個人技を使う。日本は組織的に11人で連携して戦うスタイル」。それが試合にも出て、勝敗に影響を与えていたという。

 ゲームに勝つという意気込みも違っていた。「欠陥ではないが、力が入りやすいシュートがあって、そのワンパターンだけを究めている外国人もいた」。効率性だけを考えて仕上げてくる海外のプレーヤーが、自分にはないサッカーゲーム観で予想をしていない動きをしてくることを理解し挑んだ翌年の世界大会で、マイキー選手は準優勝を果たして名を上げた。

 そうやって掴んだプロゲーマーのポジション。「チームに所属したり、スポンサーがついていたりする。負けて次に頑張ろうではすまなくなり、勝つことが前提になる。負けたときのプレッシャーは半端ない」。そこでメンタル的に負けてしまうと、プロゲーマーとしてはやっていけない。ここもリアルなスポーツと同じ、趣味を仕事にして究めようとする覚悟が求められる。

 ◆リアルのスポーツ産業も関心

 EAという一企業が発売しているサッカーゲームの大会を、ワールドカップと同じFIFAが主催して開いていることからも分かるように、リアルのスポーツ産業がe-Sportsへの関心を強めてきている。田中将大選手が所属するMLBの名門ニューヨーク・ヤンキースがe-Sportsの参入を表明し、ブラジル代表のネイマール選手が所属するサッカーのパリ・サンジェルマンも、e-Sportsのチームを持って「League of Legends」や「FIFA」などの大会に参戦し始めている。日本でもJ2に所属する東京ヴェルディがe-Sportsのチームを作ったことが話題になった。

 これは、ゲームの対戦をスタジアムのような会場やネット、テレビの中継で見て楽しむファンが増え、リアルスポーツと同じ産業として成り立つと思われ始めていることが背景にある。「リアルなスポーツは長いけれど、サッカーゲームは10分とかで終わるから見やすいという人はいる。サッカーは見ないけれどゲームの配信を見るのが好きという人もいるようだ」とマイキー選手。自身も、先だってフランスで行われた大会に出場して、観客が見守る中をステージ上で対戦する経験をして来た。映像には、サポートを受けているスポーツブランドで固めた選手たちの姿があった。

 「リアルスポーツチームが(e-Sportsの)チームを持つことがありそう」とマイキー選手。FIFAやウイイレのようなスポーツゲームは、リアルスポーツとの連携も強く出せるため、レアル・マドリードやバルセロナといった世界的に知られているビッグクラブが参入してくる可能性もあると見る。「お金なり名声なり地位がある機関がe-Sportsを始めてくれることで、一般の人の見方が変わってくるのは間違いない」。しょせんはゲームの大会と言っていた時代はすでに過去のものとなっているようだ。