【開花した韓国事業 Jトラストの挑戦】(1)規制強化でも「日本式」が奏功
■ノンバンクから転換、生きた先読み戦略
Jトラストの韓国金融事業が安定成長期に入った。金融当局による規制強化という逆風が吹く中、日本で培ったノウハウと高品質な金融サービスが受け入れられ、買収した4社のシナジー効果も寄与し、コンプライアンス(法令順守)重視の姿勢も評価された。2012年10月の貯蓄銀行業スタート時は300億円程度だった貸出資産残高は3200億円を超え、50%超だった不良債権比率は5%以下に低下した。韓国で「ノンバンク」から「バンク」に事業転換し、東南アジア進出につながった。その成功要因を現地で探った。
「満足度」3年間1位
「顧客からの評価で受賞できたので気分が良く感慨深い。今後も信頼に応えるため最高のサービスを提供できるように最善を尽くす」
昨年12月18日、ソウル・ヨイドのビジネス街中心部にあるコンラッド・ソウルで開催された「2018ファーストブランド大賞」の表彰式で、JT親愛貯蓄銀行のジョ・ウォンジュン専務はこう喜んだ。
貯蓄銀行部門の消費者満足度調査で3年連続ナンバーワンに選ばれたからで、「親しまれ、愛される銀行」を目指すという行名通りの評価を確立。日本企業でも商品・サービス、経営姿勢が支持されれば成長できることを証明した。
韓国金融業界は都市銀行や地方銀行などの第1金融圏、貯蓄銀行や与信専門金融会社などの第2金融圏、さらに金融当局管轄外の消費者金融などの第3金融圏に分類される。
Jトラストが買収した2つの貯蓄銀行は第2金融圏に属し、金融当局の厳しい規制に直面している。全ての金融機関が対象の上限金利の急速な引き下げに加え、個人向け貸し付けの年間増加率は5.4%以内に制限。貸付金利20%以上の融資への引当金負担も1.5倍に引き上げられるなど業務への締め付けがきつくなっている。
韓国に常駐して再生に導いたJトラストの千葉信育専務は「規制は毎年ものすごい勢いで強化され、収益が年間10億~15億円伸びても規制で打ち消される。それでも緩やかな成長を継続している」と話す。18年以降も新たな規制がめじろ押しだが、日本での経験を生かして成長を追求する姿勢は変わらない。というのも韓国進出前から「規制強化は起こりうると予測していた」(千葉氏)からだ。
量の確保より質
日本では、上限金利に張り付いた商品を提供し続けた消費者金融会社は顧客離れから撤退に追い込まれた。これを踏まえ、上限金利の引き下げには低金利商品で対応。金利に敏感な韓国の国民性も追い風に、貸し出し資産を大幅に増やした。日本の経験を生かした先読み戦略が奏功し、親愛貯蓄銀とJT貯蓄銀行を合わせた貸出残高は79行中3位に成長した。
今年2月から上限金利が27.9%から24%に引き下げられたが、既に24%以上の商品の取扱割合は低く、影響は少ないという。それでも対応は怠りない。親愛貯蓄銀の江口讓二専務は「量の確保より質にかじを切る。リスクコントロールにもなる」と戦略を披露。優良顧客を選別するなどして健全性を強化する一方で、中小企業向け貸し付けを増やしポートフォリオを改善していく。
文化融合にも配慮
15年1月にグループ入りしたJT貯蓄銀は金利引き下げを見越した商品開発に知恵を絞る。16年6月に差別化商品として業界初の割賦金融商品を発売。チェ・ソンウク代表理事は「ポートフォリオの多角化の一環。小規模銀行だが、新商品投入にチャレンジしていく」と強調。その上で「スモールプロジェクトファイナンスの主幹事を取りたい。仕掛け中で今年後半には実現したい」と意気込む。
顧客目線で、利便性の高い金融商品・サービスをライバルに先駆けて投入できたのは、Jトラストのスピードと柔軟性を持ち込んだためだ。マーケティングや法令順守の厳格化も日本流を取り入れた。千葉氏は「日本で取り組んできた全てのことを紙に書き出して試した」という。
ただ、Jトラストのビジネスモデルを押しつけることはない。日本のノウハウ導入時に多くは抵抗なく受け入れられたが、韓国文化との融合にも気を配った。韓国人を進んで登用し、韓国人が好む終業後の食事や飲み会といったコミュニケーションにも日本人から積極的に加わった。
Jトラストが発表した17年4~12月期決算で、韓国金融事業の営業利益は前年同期比58%増の30億円に膨らみ、18年3月期の通期予想は従来の32億円から35億円に上方修正された。厳しい規制の下でも成長を継続できる体質への転換を確信したからだ。韓国で開花した金融事業の成功モデルはインドネシアに引き継がれていった。(松岡健夫)
▼【開花した韓国事業 Jトラストの挑戦】(2)“日系貸金業者”の先入観に苦戦
■Jトラストの韓国金融会社
(左から)業態/総資産/総与信/グループ入り時期/資本金/営業店数
・JT親愛貯蓄銀行
貯蓄銀行業/2兆337/1兆6615/2012年10月/717/11
・JT貯蓄銀行】
貯蓄銀行業/1兆618/8905/15年1月/999/4
・JTキャピタル
割賦・リース業/6021/5356/15年3月/1080/6
・ティーエー資産管理
債権回収業/1207/1697/14年3月/87.5/6
※総資産、総与信、資本金の単位は億ウォン。ティーエーの総与信は未返済元本残高。2017年12月末基準(営業店数は18年2月26日時点)
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