【巨艦の行方 パナソニック創業100年】(中)「脱家電」大胆変革、プラズマ撤退を教訓
■「脱家電」大胆変革迫る世界競争 プラズマ撤退を教訓、主役交代
「パナソニックの100周年をお祝いしたい」
今年1月、米ラスベガスで開かれた世界最大の家電見本市「CES」で、主催団体のゲイリー・シャピロ最高経営責任者(CEO)がパナソニックの津賀一宏社長に語り掛けた。1967年に始まったCESの半世紀の歴史で、パナソニックは最初の年から参加している最古参。世界のメーカーの競争や盛衰を見続けてきた証人でもある。
2人の会話では、ここ数年の業界の大きな地殻変動のことが話題となったという。ブラウン管テレビの時代からパソコンやCD、DVDや薄型テレビへと進化してきたCESの展示だが、今年は自動運転や人工知能(AI)の進化を背景に、主役はすっかり自動車へと交代。パナソニックも家電の展示を大幅に縮小し、自動車向け事業へのシフトを鮮明にした。
国境や業界の垣根を越えた競争が進む中、津賀社長は「従来型のビジネスでは成長は見込めない」と大胆な変革の必要性を強調する。「脱家電」を掲げた戦略がそれだ。
提携進め地位固め
創業以来の中核事業だった家電から、電気自動車(EV)向けの電池やAIを使った運転システムなどに収益の柱を転換する。米EVメーカーのテスラやトヨタ自動車と次々と提携を進めて地位固めを図るが、パナソニック幹部は、その背景には「プラズマテレビの教訓がある」と指摘する。
2009年まで累計約5000億円を投じて兵庫県尼崎市で稼働したプラズマ工場だが、海外勢も巻き込んだ競争に敗北。連結業績は12年3月期から2年連続で7000億円を超す巨額赤字に陥った。事業は撤退を強いられ、工場も他社に売却された。
自動車分野を担当する柴田雅久専務は「自動車部品メーカーとして世界トップ10を目指す。特に電池は有望だ」と強調する。自動運転でも、昨年秋に福井県永平寺町で電機メーカーとしては異例の公道実験を実施。細かな走行データを積み上げ開発に生かす考えだ。
投資「危険な賭け」
だがテスラとの提携には既に暗雲が漂い始めている。パナソニックはテスラのEV向けに電池を供給しているが、新型車の生産遅れで在庫が積み上がり、17年度に計画していた売上高のうち約900億円もが消失した。
テスラのイーロン・マスクCEOは「解決は時間の問題」と強気だが、出口は見えていない。
パナソニックは電池の生産のため米国工場に約2000億円を投じているが、みずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「投資をきちんと回収できるか、危険な賭けの面もある」と指摘。「脱家電」への転針は巨大なリスクと背中合わせでもある。
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