【開花した韓国事業 Jトラストの挑戦】(2)“日系貸金業者”の先入観に苦戦
■“日系貸金業者”の先入観に苦戦
韓国で絶大な人気を誇る携帯端末用絵文字がある。Jトラスト(JT)グループが子犬をモチーフに2017年1月に発売したイメージキャラクター「ジャンピー」の絵文字スタンプだ。無料通信アプリの「カカオトーク」では同1~2月の期間限定で27万件のダウンロード、「LINE(ライン)」ではクリエーティブ部門の販売第1位を誇る。
JTグループが進出した12年当時、貯蓄銀行は破綻などが相次ぎ不良金融機関という認識が広がり、貸金業と同類との誤解もあった。日本企業に対する否定的な感情もあって、15年9月に広告モデルに採用した人気女優のコ・ソヨンさんが社会的非難を浴び契約破棄に追い込まれる事件が発生。知名度向上に欠かせないマーケティング活動が思うようにできなかった。
そこで戦略を変更、商品をダイレクトに訴求する競合他社と違い、親近感ある金融グループというイメージづくりに注力。日系貸金業者という先入観を排除するため、韓国で最も大衆的に愛される子犬に着目し、キャラクターマーケティングに乗り出した。
子犬のキャラ大人気
1000万人の愛犬家に向け16年に愛犬イベント「JTワンワンコンテスト」を初めて開催、優勝犬にCM出演の特典を付けて国民を巻き込んだ。知名度が高まった第2回コンテストではホームページ訪問者数が35万を超え前回比55%増加、オンライン投票数は26万超と41%増えた。ジャンピーは初代優勝犬のポメラニアンをイメージしたという。
また、ソウル中心にライバルに先駆けてタクシーの側面に広告を出し、ドラマのスポンサーにもなった。プロ野球「ネクセンヒーローズ」を後援、野球ファンにJTブランドをアピールした。
ユニークなマーケティングが効果を発揮し、「貯蓄銀行に対する否定的な見方がある中でワンちゃんとスポーツで肯定的イメージが定着した」とJT親愛貯蓄銀行マーケティング戦略部のソン・ファソン次長は喜ぶ。同行は会員制交流サイト(SNS)も積極活用、昨年12月にはフェイスブックのフォロワー数が8万を超え、貯蓄銀行業界で第1位に躍進した。
積極的CSR継続
ボランティアなどCSR(企業の社会的責任)活動への積極参加も知名度向上に役だった。
ソウル市内から車で30分ほどの新興都市カンナム市。15年から同市の地域児童センター連合会に所属する低所得層家庭の子供たちを招待して「本当に幸せなクリスマスパーティー」を開催している。
昨年12月のパーティーではJTグループ役職員86人が参加。子供たち50人と一緒になって組対抗ダンスバトルで汗をかき、子供たちはさまざまな踊りを披露した。約100種類の料理が用意された夕食ビュッフェではアイスクリームコーナーに子供たちの長い行列ができた。
パーティーを楽しんだJTキャピタルのチャ・ドング代表理事は「地域の社会的弱者を応援するのもわれわれの役割。お金がないので体で参加する」と笑った。その上で「ボランティアはリーダーシップ教育の一環。コストがかかっても社員の参加機会をつくる」という。
地域社会に近づくことができるCSR活動は韓国進出以来続けており、一人暮らしの高齢者向け給食ボランティアや、シングルマザー支援団体への寄付などに取り組んでいる。
ドラマを制作支援したことで約20人のJTグループ役職員が出演でき、視聴者にJTワンワンコンテストや社会貢献活動などを直接訴求。国民に「親しまれ愛される銀行」イメージを浸透させることにつながった。
業界初を連発するユニークなマーケティングと積極的なCSRにマスコミの注目度も高まる。JTグループ全体の17年の報道量は2115件と前年比24%増加し、内容もポジティブな論調が多く全体の8割を超える。韓国事業を統括する千葉信育Jトラスト専務は「昔はネガティブ報道が多かった」と様変わりに満足げだ。進出当初の日系貸金業者から韓国の銀行として認められるようになった。(松岡健夫)
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