謎呼ぶ突然の社長交代 老舗出版社ベストセラーズが身売り 一族経営で業績悪化か

 
超ロングセラーの細木数子氏「六星占術」シリーズ

 老舗出版社のベストセラーズ(東京都豊島区)が注目を集めている。1月31日付で、オーナー社長の栗原武夫氏の辞任と同時に、取締役7名が辞任した。新社長に就任したのは経営コンサルタントで公認会計士の塚原浩和氏で、栗原前社長らオーナー家が持つベストセラーズの株式は新社長側へ売却された。(東京商工リサーチ特別レポート)

◆細木数子氏「六星占術シリーズ」などヒット作も

 社長と同時に税理士1名も役員に就任し、役員2名体制での経営がスタートして1カ月が経過した。

 KKベストセラーズで知られる同社は1967年の創業。元プロ野球選手の江本孟紀氏の「プロ野球を10倍楽しく見る方法」(1982年)やワニ文庫、最近では細木数子氏の「六星占術シリーズ」、「本当は恐ろしいグリム童話」、サッカー日本代表の長友佑都氏の「体幹トレーニング20」などジャンルにとらわれないヒット作を生んだ。

 100名以上の従業員を抱え、総合出版社として知名度も高い。

 だが、最近は東京商工リサーチ(TSR)の調査取材に業績を開示しない状況だった。1999年10月期は約135億円だった売上高も、出版不況の影響で最近は100億円を割り込んでいたようだ。

 ただ、豊島区の本社不動産は現在も無担保で温存され、同社の信用背景になってきた。

◆労働組合は「青天の霹靂(へきれき)」と反発

 1月31日まで社長を務めた栗原武夫氏は2013年に社長に就任し経営を引き継いだ。その後も父親で先代の栗原幹夫氏は会長、社長の実兄の栗原慎典氏も常務として経営に携わり、栗原家によるオーナー経営が続いてきた。

 誰もが今後もオーナー経営が続くと思っていたところに、1月31日をもって新社長への株式譲渡が実行された。同社社員で組織される労働組合は、一連の役員交代・株主変更が突如発表され、「全従業員にとって青天の霹靂」と驚きをブログで綴っていた。

 塚原新社長は公認会計士の資格を持ち、2017年4月に経営代行、廃業支援、M&A仲介などを目的としたクロサポ・ハンズオン・コンサルティング合同会社(東京都新宿区)を設立した。

 1月11日には同所に塚原新社長を代表とする持株会社ベストセラーズ・ホールディングスを設立したことも明らかになっている。

◆事業譲渡か清算か 再建の行方は?

 ベストセラーズに一連の経緯や今後の展開の取材を求めると、「(その件には)一切、応じていない」と拒んだ。しかし、「通常通りの営業、出版事業は続けている。今後の方策は検討中で、アナウンスはない。新社長は毎日出社し、社員と適宜コミュニケーションをとっている」(総務担当者)とコメントした。

 一方、塚原新社長は今後について、新スポンサーへの事業譲渡を前提に再建を模索していると言われる。

 関係先では、「ベストセラーズは4期連続の赤字を計上するなど経営悪化が深刻で、旧オーナーの方から塚原新社長に買収を打診した。今後、スポンサーが現れれば事業譲渡か、難しければ将来的には廃業も視野に入れる意向」との見方を示した。

 取引先への未払いはなく、資金繰り上の懸念も少ない。だが、会社の存続を新スポンサーに委ねるベストセラーズ。資産売却による清算も取り沙汰されるが、新社長がどのような方向性を打ち出すか、目が離せない。

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