【開花した韓国事業 Jトラストの挑戦】(3)順法意識徹底、当局も信頼
■「貯蓄銀の経営モデル」とお墨付き
コンプライアンス(法令順守)など内部管理態勢を強みとするJトラストは韓国で認められるため、進出当初から順法経営に徹底的にこだわってきた。千葉信育専務は「貯蓄銀行始まって以来といわれるほど厳格に行った。そのかいあって金融リテラシーが高まり、職員の誠実さが向上。顧客に喜ばれる企業風土ができあがった」とほっとした表情を浮かべた。日本から持ち込んだ順法態勢は経営の透明性を高め、金融当局から貯蓄銀行の経営モデルと認められた。
「法令順守はコスト度外視。当局から厳しすぎるといわれるほど愚直に、ぶれずに取り組んだ」。JT親愛貯蓄銀行の江口譲二専務はこう強調する。
チームプレーより個人主義、過程より結果を重視しがちとされる韓国に順法意識を完全に植え付ける必要があったからだ。個人情報保護法の施行が日本より遅れたこともあって習慣的に情報管理も甘い。このため、厳しい日本の順法経営を身につけた日本人が送り込まれ、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の重要性を説きながら、業務の細部まで正確に伝達。日本流を浸透させることに成功した。
日本流を浸透
日本での研修も行った。2017年3月にグループ4社から12人の精鋭がJトラストのほか、子会社の日本保証、パルティール債権回収などを見学、金融業にかかわる法律や規制、それに対応するシステムや教育を学び、法令順守意識を高めた。
また進出初期には全営業店に専従職員(順法監視代理人)を配置。全役職員の意識向上に向け毎月、順法教育の実施を義務付けるとともに順守状況を点検した。意識が根付いた今は監視担当者を兼職にして日常監視体制に切り替えた。
順法意識の高さは金融当局の目に留まった。親愛貯蓄銀に対し15年6月に行われた預金保険公社との共同検査で、検査官が内部統制について業界トップクラスと評価。検査中に、同行の内部監査チェックリストやマニュアルなどを他の貯蓄銀行の教育資料に活用したいと要請され提供した。
江口氏は「一つの印鑑捺印(なついん)、1ウォンの支払いからすべて、社長決裁とする『1円稟議(りんぎ)制度』を徹底。多い日には1日200件の申請を決済したが、当局から『非効率だ』と非難された」と笑う。
JT貯蓄銀行でも昨年12月、営業本部長とリスク担当部長が当局と面談。個人事業者向け迂回(うかい)融資と不良貸出に関するリスク管理方法について意見を求められた。韓国内で個人向け貸付が増える中、貯蓄銀行業界で個人事業者に対する迂回融資などの懸念が高まっていたときだった。
同行のチェ・ソンウク代表理事は「当局にアドバイスできたのはリスク監視態勢が評価されたから。法令順守は最も重要と認識して動いてきた成果」と胸を張った。同行は金融消費者連盟の収益性・健全性・安全性評価で昨年8月、貯蓄銀行でナンバーワンに選ばれた。
職員の士気向上にも力を入れてきた。フリーエージェント制度やポジション公募を採用したほか、表彰者選抜総選挙や部下による上司のヘッドハンティングなども実施している。江口氏は「人事評価に不満があるなら手を挙げればいい。自分の居場所は自分でつくりなさいということ」と説明する。銀行業界出身のチャ・ドングJTキャピタル代表理事は「Jトラストは人材を大事にする」と評価する。
徹底した順法態勢を築いた韓国に16年12月、次の進出先となったインドネシアからノウハウの取得を目指して9人が研修にやってきた。
輸出できる水準に
内部管理態勢全般のスペシャリストとしてインドネシアに派遣されている池田武士氏は順法監視室の業務実態などを見ながら、「JTグループとしての一体感やスローガンなどの可視化による意識付けの重要性を再認識した」と納得して帰国。監視室をモデルとした品質管理や適切な業務運営などを取り入れたという。
「日本と韓国のいいところをインドネシアや他のASEAN諸国に輸出する」と言い続けてきた千葉氏にとって、韓国の順法態勢は輸出できる水準に達したといえる。(松岡健夫)
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