ドラクエと落語が融合、楽しみ方広がる アクションゲームの舞台を探索して歴史の勉強も
国民的RPG(ロール・プレイング・ゲーム)が伝統の落語と融合する。世界で人気のアクションゲームが歴史を学ぶコンテンツになる。本来の遊び方とは違ったゲームの展開が、双方に新しいユーザーを呼び込む効果を起こしそうだ。
CMで好評、「ドラクエと落語」のコラボ
「メガンテ覚悟で告白したら“いてつくはどう”で返される」「ボタン連打でセリフを飛ばし世界の半分もらったよ」。3月6日夜、東京・新宿にある新宿末廣亭の高座にのぼった落語家の口から繰り出される都々逸(どどいつ)に、観客たちが笑い声をあげて反応する。落語家のかたわらにはスライムと呼ばれるモンスターの大きな顔。落語家がこれをかぶって入場してきた時も、観客席は大いに沸いた。
日頃から新宿末廣亭に通っている落語ファンが見れば、何が現れたかと驚き、メガンテやボタン連打といった言葉の意味がわからず戸惑いそうだが、この日の寄席は『「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」四周年特別企画 ドラクエ落語 新宿末廣亭』と銘打たれて行われた一夜限りの公演。スクウェア・エニックス(東京都新宿区)が30年以上展開しているゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズをテーマにした落語を聞かせるもので、長くドラクエに親しんできたファンなら、都々逸の言葉に「あるある」といった共感を抱いたようだった。
国民的RPGとして知られる「ドラゴンクエスト」から派生した「ドラゴンクエストモンスターズ」が、2014年1月にスマートフォンやタブレットで楽しめる「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」として登場。今年1月にサービス開始4周年を迎えたことを記念し、落語家の笑福亭鶴瓶さんを起用したテレビCM「DQMSL 四周年口上」編を放送した。ここで見せたドラクエと落語という意外な組み合わせが好評で、実際の寄席でドラクエをテーマにした落語を行ったら面白いと考えたことから実現した。
「伝統と先端」の融合ネタを披露
高座には4人の落語家たちが、それぞれにドラゴンクエストシリーズをテーマにした噺をひっさげ登場した。まず前座。ドラキーと呼ばれるモンスターを頭にかぶって登場し、ドラキ亭らりほの輔と名乗った落語家は、座布団の上で顔を見せて改めて笑福亭茶光を名乗り、朝が弱く力仕事も嫌いな男が、動物園で動物の代わりをするという仕事を得て大変な事態に巻き込まれる落語「動物園」にドラクエの要素を入れて聞かせた。
ゴーレムのかぶり物で高座に上がったゴーレム亭めるきど丸こと笑福亭羽光は、古典落語のパロディではなく、異世界を救うために元芸人の男が“あるある話”で対決するというオリジナルを披露。「村を救ったのに宿代をきっちりとられる」といったドラクエファンならピンと来る話を織り交ぜ、落ちもドラクエならではのものにして笑わせた。
手に剣と盾を持ち、ナイト亭ぴえーる之丞として登場した笑福亭鉄瓶が演じたのは、古典落語の「運廻し」から「田楽喰い」の部分をドラクエと融合させたもの。ボタン連打で起こってしまうドラクエならではの現象を言って、こちらも笑いを誘っていた。トリを飾ったのが、スライム姿で登場したスライム家ぷる蔵こと三遊亭とむ。父と子が都々逸で勝負をする古典「都々逸親子」のパロディでさまざまな都々逸を披露し、こちらも落ちをファミコン時代のドラクエを知るファンならわかるネタで締めた。
ドラクエのファンなら大いに楽しめた「ドラクエ落語」。ドラクエにはそれほど詳しくない落語のファンでも、笑いが絶えなかった高座にドラクエへの興味をかき立てられたようだった。スクウェア・エニックスで「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」を手がける柴貴正プロデューサーも、「ドラクエも落語もエンターテインメントとして面白いもの。まだ遊んでない方はダウンロードして」とアピールした。好評ぶりにまた見たいといった声も少なくなく、伝統芸能と先端エンターテインメントをともに盛り上げる企画として、今後の開催に期待もかかる。
古代エジプトの世界へ
ゲームの中にリアルに再現された古代エジプトを歩いて回る。ユービーアイソフト(東京都渋谷区)が販売しているゲーム「アサシン クリード オリジンズ」の追加コンテンツとして登場した「アサシン クリード 古代エジプト ディスカバリーツアー」は、暗殺者として過去の時代を走り回るアクションゲームを、百科事典や歴史書の中に入り込んで情報を見ながら歩き回る教育コンテンツに変えるものだ。
「歴史に対する熱意で古代エジプトをゲームの中に再現した」と、ユービーアイソフトのスティーヴ・ミラー社長がアピールするほど、「アサシン クリード オリジンズ」の中に作られたプトレマイオス朝末期のエジプトは、建物や自然、人の雰囲気が緻密に再現されている。ゲームであってもフィクションに逃げず、リアルさを探求するのが「アサシン クリード」シリーズの特徴。今回も「建築家や考古学者の監修を受けている」と自信を見せる。
そうした世界をゲームの舞台だけにとどめておくのはもったいない。そんな思いも浮かんでいたところに登場したのが「ディスカバリーツアー」だ。ゲームではミッションをクリアするために走り回る古代エジプトを、主人公だけでなくクレオパトラ七世やカエサルといった歴史的なキャラクターを操作して探索できる。
その場所も、アレクサンドリア大図書館や大ピラミッド地下室といった歴史的なスポットから、古代エジプトの農業、家畜、医学といったテーマについて学べる場所まで75に及ぶ。エジプトと言えば誰もが思い浮かべるミイラの作り方も紹介。見て回ればエジプトの自然から産業、人々の暮らしに至るまで詳しくなれる。
古代エジプト美術館のオーナーで、古代エジプト遺物のコレクターとして知られる菊川匡さんは、「細部に至るまで当時のエジプトが忠実に再現されている」と太鼓判。「次にあそこにいけば何が出てくるんだろうといったワクワク感があって面白い」と評価した。3月7日に開催された「ディスカバリーツアー」のPRイベントに登場した女優の酒井美紀さんも、プレーした子供たちがエジプトや歴史について「興味を持って学ぶようになるかも」と話して、教育的な効果があることを指摘した。
ユービーアイソフトでは、この「ディスカバリーツアー」を教育用コンテンツとして展開していく考えで、博物館などで体験できるような環境作りを行っている。3月31日までの日程で、東京・池袋にある古代オリエント博物館に無料で体験できるコーナーを設置。教育のためにソフトウェアの提供を求める博物館や教育機関からの問い合わせにも応じて、「アサシン クリード」シリーズから生まれた新しい楽しみ方をゲームファン以外にも広げていく。
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