広がる「VRショッピング」 3Dで模様替えもラクラク

 
ウォルマートのバーチャルショッピングサイト

 アメリカの大手小売チェーン店ウォルマートが、同社のオンラインショッピングサイトで、バーチャル(仮想)ショッピングが楽しめるサービスの提供を6月末より試験的に開始した。ユーザーは仮想アパートの中を見て回りながら、気に入ったものをクリックして購入することができる。

 ◆米ウォルマートは600品目をテスト販売

 仮想アパートには「寝室」「ダイニングルーム」「リビングルーム」「キッチン」「オフィス」「子供部屋」「バスルーム」「パティオ」があり、各部屋に合った家具や雑貨が配置され、購入可能なものには黄色い二重丸の印がついている。たとえばキッチンなら、トースター、まな板、コーヒーメーカーなどが購入できるようになっている。

 部屋ごとに家具などのインテリアがコーディネートされているため、アイディアを真似したい人は、各部屋にあるものを仮想アパートの下に表示し、まとめて複数の商品を選んでショッピングカートに入れることも可能だ。

 当初は70品目程度だったが、現在は約600品目まで増えており、生活に必要なものはほぼすべて揃えることができる。3Dメガネのグーグル・カードボードや韓国サムスン電子製のゴーグル型VR(仮想現実)端末「ギアVR」を使えば、アパートの立体感も楽しめる。

 ◆日本でもパルコが展開

 バーチャル・ショッピングのアイディア自体はそれほど目新しいものではない。日本でもパルコとボヤージ・グループが2017年3月22日から4月9日までの期間限定で、VRショッピングが可能な「VRパルコ」を公開したほか、今年5月には同じくパルコが渋谷において「2020年の買い物体験」として、リアルとバーチャルを組み合わせたショッピング体験のデモンストレーションを行った。

 ではウォルマートのバーチャル・ショッピングの特徴は何かというと、先述したようにさまざまな商品をコーディネートされた状態で見ることができる点と、サイズ感がわかる点だろう。また、「エブリデー・ロープライス(毎日低価格)」をスローガンにお手頃価格の商品を提供するウォルマートが、バーチャル・ショッピングに取り組み始めた意味合いは大きい。仮想体験が幅広い層へと浸透する可能性を秘めている。

 家具や室内装飾品の購入を支援するVRや拡張現実(AR)のスマートフォンアプリも増えている。アメリカにおいては大手家具店のアシュリー・ファニチャー、同じく家具店のウェイフェア、日本でもおなじみのイケア(スウェーデン)、そして米アマゾンなどがアプリや専用サイトを公開している。それぞれ細かい機能は異なるものの、基本的にはソファやテーブルなど大きな家具を購入する前に、仮想空間つまりアプリ上で、自分の家(部屋)にそれらの家具がきちんと収まるかどうかを確認できるというものだ。

 ◆ARによる購入体験も注目

 また米家電量販店のターゲットは昨年10月、AR機能を利用して、購入前に家具が部屋に配置できるかどうか、実際に配置した場合どのように見えるかを確認できるモバイルウェブサイトを立ち上げた。使い方は簡単で、まず買いたい家具(写真では椅子)を選び、その家具を置きたい場所の写真をスマートフォンで撮影、最初に選んだ家具をアプリ上で動かしたり向きを変えたりして配置するだけだ。

 特にARによる購入体験は、今後さらに発展する可能性がある。アップルは6月に開催した世界開発者会議において、この秋発表予定のアイフォーン向け基本ソフトウェアiOS 12を搭載するAR機能では、現実に存在する机の上にデジタルなモノやキャラクターを置いたり、バーチャルな物体の大きさを測ったりすることが可能になると発表した。

 つまり将来的には、目の前に実寸のデジタルな椅子を置いて、サイズや配置を確認できるようになるということだ。将来的にと書いたが、これはそれほど遠い未来の話ではなく、今後数年以内に実現するだろう。(岡真由美/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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